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□チョコミントラテとコーンポタージュ
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【チョコミントラテとコーンポタージュ】




片方は遠目で眺めていてもそのきりっとした横顔や意志の強そうな所が伝わって来る人。
ああ…、凄い、今日も天地の虎を目だけで静かにさせてる……、なんて。
(『ゆかりは天地の猛獣使いだから』って夕歩が教えてくれた)
もう片方は儚げな美少女に見えて、その実頑固で芯は鋼のようなルームメイト。
今日も味方のはずの地の星を容赦なく殴り倒してるのを遠目で眺めて。
(『みんなあの外見に騙されるのよね…』って染谷さんが教えてくれた)

………実はこの二人の仲がいいのが羨ましかったりする。




「…最近、よく部屋に来るね」
「…来たら迷惑みたいな言い方するのね」
「ううん、いいよ、大丈夫だよ。ゆかりがちゃんとここに来る理由を言ってくれるなら」
「今度は理由が無いと遊びに来るな、みたいな言い方ね」
「言えない理由なの?」
「だから、理由なんて何でもいいでしょ?」

最近ではお決まりになりつつあるやりとりを横目で眺めて。
ああ、本当に仲がいいよね……なんて。
久我さんに対する時もそうだけど、こういう風にぽんぽんと喋る時の夕歩は言葉の辛辣さに反して楽しそうな瞳をしてる。
(偶に凄く困った顔をしてる時もあるけど)
染谷さんも………
視線だけで顔を窺えば目が合っただけで慌てて視線を逸らされるから。
小さく小さくため息をついて、項垂れる。
……私とじゃこんな風に会話は弾まないのにな。
本当に、二人が仲がいいのが、心から羨ましい。
ストローで最近お気に入りのチョコミントラテをすすって、また染谷さんの顔を窺うけど今度は視線すら合わない。
………………ううっ。

「なに?それ」
「一口飲む?」

同じく私の買って来たチョコミントラテを飲んでた夕歩に染谷さんが問い掛けてるから。
もう一本買ってくれば良かった、とか。
そこで何の違和感も躊躇も無く飲みかけを差し出せる関係にまたなんか、ちょっと……。
同じことを夕歩となら出来るのに、染谷さんとは出来ない。
ずずっ、と残ったチョコミントラテをすすって。
この感情の意味や理由は自分でもよく分からないけど。

「どう?」

染谷さんの飲んだストローを見つめて。
それを咥える夕歩の唇を見て。

「……歯磨き粉の味がする」

染谷さんの眉間に寄った皺を見つける。
ああ……、凄く美味しくなさそうな顔……だね。

「………これ、最近の恵ちゃんのお気に入りなんだけどね」

……うん、気にしてないから大丈夫だよ。
 
   
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