【3】

□Q&A
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【Q&A】




Q:どんな時に『それ』を感じますか?


A:自分は嫌いなチョコミントを私の為に買って来てくれる時








「はい」
「ありがとう」

渡された袋の中に入った一人分のチョコミントアイスは私への手みやげ。
二人で過ごす時間が増えたのは最近のこと。
元々、夕歩は私達を置いて何時も何処かに消えたがっていたし。

「染谷さんの分は?」
「私の分は良いから」

そう言われても一人で食べるわけにもいかないから、何時も手みやげは一度冷蔵庫にしまわれる事になる。
二人きりの空気はいつも硬くて重くて。
何でわざわざこんな思いをしてまで一緒にいるの?って聞かれるとたぶん答えは一つなんだけど。

―恋に溺れてる今の感想は?

意地悪く笑ってるのに可愛く見えてしまうルームメイトを恨めしく睨んで。
それでも息を吸い込んでこう返す。

―…悪くないよ

「…私」
「はい?」
「馬鹿の一つ覚えね。何時も同じ物で芸が無い」

くしゃ、って顔を歪めてても美人は美人。
どんな顔をしてても綺麗なものは綺麗だから。
しばし、口を開けて見惚れた後に我に返って言葉の意味を考える。

「な、何が?」
「チョコミント」
「あー」

―貴方が好きって言ってたから。

そう付け加えてくれた時点でどれだけ威力がある事を言っているのか気付いてない染谷さんも相当な天然だと思う。

「…他にも好きなモノあるんだけど」

きっかけになったコーンポタージュもその一つ。
…手を伸ばすのに躊躇するのが少なくなったのは何時くらいからかな?
なんとか前へ進んでる証拠に手も握れるようになった。
十円玉を渡してくれた指先を撫でて。
ああ、やっぱり綺麗な指をしてる。
そう思いながら指先しか見つめる事が出来ないのは不似合いに赤くなった頬を見ると抑えられなくなるから。

―我慢できなくなる事……ない?
―我慢なんて何でするの?

質問に質問でそう返して来た友人に返す言葉もなく。
(きっと夕歩は思ったらすぐ行動なんだと思う)

「聞いてくれたら答えるから」

言って顔を上げたら、ついその顔を見つめてしまった。
片方だけ見えてる瞳が頼りなく彷徨うのを追いかけて……しばしの逃亡の果て捕まえる。

「だから、私も聞いていいかな?」

聞きたいことはたくさんある。
何が好きで何をしてる時が一番楽しいのか。
どんな時に『それ』を感じるのか。
どんな時に『私に好きだと思われてる』って感じるのか。
今がその時だといいけど…。

「…ねえ」

捕まえたままの瞳に笑いかけて。
私と染谷さんどっちの頬の方が赤いだろう?
そんな事を考えながら質問を口にする。

「キスしていい?」

答えは何時も言葉では返ってこないから。
この答えは返してもらわなくても知ってるから。
静かにゆっくりと唇を重ねた。





…まだまだ私達にはたくさんのQ&Aが必要。






























「……そう聞かれて断れると思う?」
「い、嫌だった??」
「…嬉しい…けど…」





END
(12/08/11)

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