【3】

□できない相談とできる親友
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『デート』とは言っても、一緒に出かけただけと言えばそれだけ。
気まずい沈黙が続く度に相手を夕歩と思え!と自己暗示をかけながらなんとか乗り越え。

(『夕歩はあんなにふにゃって可愛く笑わないけど』『…ゆかり、それ余計』)

一緒にいたいのに、一緒にいると心臓が潰れそうになる。
誘ったのはいいけど迷惑がられてるんじゃないか。
今のこの時間を楽しんでくれているのか、それともただ付き合ってくれているだけなのか。
そんな事ばかりで頭がいっぱいになる。

(『恵ちゃん優しいから』『…それ、さっきの仕返し?』)

…そもそも、私は増田さんにとってどの位置にいるんだろう?
まだ『友達の友達』なのか、それとも『友達』の枠に入れたのか。
それとも………。

「染谷さん」
「…………はい」

行く先が思いつかなくて。
『一緒にいたい』が今日一番の願いなのに。
何か理由を付けないとどこにも行けなくて。
……行く先が無くなれば後は帰途につくだけ。

「歩くの遅いけど大丈夫?」
「あ……ええ、大丈夫」

帰り着くのが嫌で足が重いとは言えなくて。

(『何でそれを言わないの?』『言えるわけないでしょ!』)

いつの間にか一歩先を歩いていた増田さんが振り返るから首をふる。

「足、痛いの?」
「今日は大丈夫」

前に出かけた時のことを覚えてくれてた……。
それだけなのに嬉しくて恥ずかしい。
また心臓が潰れそうなのに今度はそれが甘くて。

(『……完璧に恋する乙女だね、ゆかり』『なんで嫌そうに言うのよ』)

「歩き回って疲れたかな?」

『そんなことはない』
むしろ、そう心配しているのは私の方。
だけど、そう答える前に左手に柔らかいものが触れる。
………増田さんの手。

「ごめん、ゆっくり歩くね」
  
   
   
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