忍たまの部屋

□一年の私と六年の私2
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六年生の乱太郎が現れ一年生の乱太郎が消えた。


それをもう一人の担任、山田に伝えた土井は取り敢えず自分の上の着物を着させた乱太郎と並び反応を待つ。


山「………………本当に乱太郎なのか?ι」


乱「ええ、まぁ。ι」


たっぷり間をあけ問う山田に苦笑いして肯定する乱太郎。


その容姿は確かに乱太郎が成長したら“こう”だと思えるもので。


華奢な身体。癖の強めな赤毛は結い上げられ、丸い眼鏡の奥には翡翠の瞳。成長と共に薄くなったソバカス。一言で言えば更に綺麗で可愛らしくなった。


おまけに今は土井の着物を着ているからわからないが、先程の濡れ鼠状態の乱太郎は着物が身体に貼り付き身体のラインが浮き彫りになって女の象徴が目立っており、とても目の毒だった。


山「確かに面影のあるその顔やその綺麗な赤毛は乱太郎と同じだが、俄に信じがたいな。一体何があったのだ?」


その場に居合わせたきり丸しんべえに問うときり丸が説明する。


き「僕ら、あっちの池の近くで寝てたんスけど、しんべえの寝相の悪さに僕と乱太郎が押されちゃって、一番池の傍にいた乱太郎が落ちたんス。慌てて乱太郎を引っ張りあげたらその乱太郎が出てきて…ι」


土「一年の乱太郎が消えて六年の乱太郎が現れた。
一体どうなってるんだ?ι」


腕を組んで考え込む面々に、しかし乱太郎が答えを導く。


乱「あの池、『現の鏡』と云うらしいです。」


し「うつけのかみ?」


乱「しんべえ、うつつのかがみだよ?ι私、実はは組の皆とここにあの池を見に来たんですよ。」


土「池を?何故だ?」


首を傾げる面々に乱太郎も困ったように笑う。


乱「実は昨日の夜にきり丸が図書室で古い文献を見付けて、この辺りの伝説的なものが載ってたんです。その一つが『現の鏡池伝説』でして、『月のない夜に池を覗けば異なる現の世界に繋がる』と書かれてたんです。それを面白がったきり丸と、たまたま聴いていた団蔵が皆で見に行ってみようという話になって。」


山「異なる現の世界、つまりお前はこちらとは違う世界から来たのか?ι」


山田は更に困惑したように聞くが、正直乱太郎自身もよくはわからない状態だ。


乱「だとは思うんですけど…第一、山田先生が私の知っている山田先生とは少し違いますから。」


山「ワシか?どう違うんだ?」


乱「なんと言いますか……老けた、というのか。私の知っている山田先生は目安としてあと十歳は若いです。」


それに顔を見合わせる土井と山田。


土「もしや他にも姿形は同じでも異なるものがあるのかもしれませんね。」


山「そうだな。取り敢えず土井先生は乱太郎を連れて学園に帰ってくれるか?とにかく身体を温めないと風邪を引いてしまう…」


乱「へっくちゅ…!」


タイミングよく、くしゃみする乱太郎にきり丸としんべえが慌てる。


き「ら、乱太郎!大丈夫か!?ι寒い!?ι寒いのか!?ι」


し「乱太郎!風邪引いちゃった!?ι僕に抱きついていいよ?僕、体温は高いから!」


必死に手を伸ばすしんべえにズズッと鼻を啜ると、乱太郎はニコッと笑い視線を合わせるように膝をつく。


乱「じゃあ少しだけお願い。」


手を伸ばし、しんべえを包み込む。ついでにきり丸も巻き込んで。


き「Σちょっ、俺も!?ι////」


乱「おおっ!しんべえもきりちゃんも暖かい!あぁ〜ぬくいよ〜♪////」


二人の首の間に頭を突っ込んで擦り擦りと頬擦りしてぬくもりを得ると満足そうに離れる。


し「もう良いの?」


乱「ん♪ありがとう二人とも。これ以上は二人も冷えちゃうから。それに今夜はここで夜を明けるんでしょ?なら朝は早いからもう休んでしまわないとね。」


ナデナデと頭を撫でるときり丸は顔を赤くして、しんべえはニコッと笑う。
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