綴語

□船上の歌い手
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ついに音楽祭当日の朝になった。
本番は夕方からということだったので、各々楽に過ごしている。
ゾロが何やらゲッソリとしていたが、何となくクルーも察知し、笑いを堪えていた。



「ブルック!出来たか?」

ルフィは甲板でバイオリンを弾くブルックを見つけると、すぐさまワクワクと近づいていった。

「えぇ!!もう完璧ですよ。それにしてもルフィさんには驚かされました。まさかこんな才能があったなんて!目から鱗です!目、無いんですけどね、ヨホホホホホ!!」
「にしし、昔同じ様なこと言われたぞ。」
「え、ガイコツだったんですか?」


その様子を神妙な面持ちでキッチンから眺めるのはサンジだった。

ここ数日、ルフィはサンジの傍には居らず、ブルックと話し込んでいた。そして楽しそうに笑う。

サンジは嫉妬と寂しさで、軽く舌打ちをする。

しかし、とサンジは考える。

ルフィが歌う曲はビンクスの酒しか無かった気がする。
ルフィが演歌調に歌うというだけで、その一曲しか知らない。



「あいつ、歌知らねぇのか?」

だとすれば話は分かる。
ブルックに曲提供を頼んでいた。



だが、それでも少しは俺に構えという思いは消えそうも無い。



ブルックの事だ。明るく馬鹿みたいな海賊らしい曲を作り上げたのだろう。ルフィが離れたここでも分かるはど興奮している。



「今日までだからな、我慢するか。」








































夕方、ついに音楽祭が始まった。
フランキーとブルックがスピーカーなどをセットし、ウソップがジョッキを掲げて演説を始める。

「よーし!!音楽祭始めるぞォ!!」


全員分の曲を編曲し録音したスピーカーから最初の曲が流れる。

「あ、これ俺だ!」

トップバッターはチョッパー。昔ヒルルクやドクトリーヌに教わった曲を披露する。その歌声は可愛く、ナミは早速やんやと手を叩く。
歌い終われば「可愛い」と皆から賞賛を浴び、盛大に照れるチョッパーだった。

「おっしゃあ!次は俺様、キャプテェエエン!ウソップ様だぁい!!」

器用なウソップは歌も上手く、「まぁ予想の範疇だけどな」と、全員安心して聞いていられる。何度もウソップの歌を聴いているので、改めて聞いてもやはり安定していた。

「お次はあたし達ね。行くわよロビン!!」

ナミとロビンの華のある歌声に、サンジはノックアウト。真顔でダラダラと鼻血を流すサンジに、チョッパーは黙ってティッシュを差し出した。

「あ、次誰だ?」

流れた曲はバラード。誰が歌うのかと全員が首を捻った時、一つ気まずそうに咳払いをして立ち上がったのは、なんとゾロで。
一同、硬直。

さらに聞こえた歌声は甘い。全員が意外すぎると汗をかいたが、ゾロの手にはしっかり歌詞の書いてあるカンニングペーパーが握られていて、全員歌声が甘すぎて赤面していたが、爆笑に変わっていた。

「あ、次俺だー☆」

ゾロの意外すぎる一面を垣間見たクルーは大笑いしながら歌い終わったゾロの背中をバシバシと叩いていたが、次に流れたビンクスの酒でルフィが立ち上がり歌い始めると、意識はそちらに向き全員が笑みを零す。


「やっぱな。」
サンジの独り言に反応したのはナミとウソップだった。
「やっぱって?」
「アイツ、この曲しか知らねぇんだよ。他に歌知らないから、ブルックに楽曲提供頼んでるの見たことあるんだよ。」

ニヤニヤと笑うサンジだった。
ルフィの歌声は演歌調で、実に楽しそうに歌っている。それだけで、全員は大笑いした。


ビンクスの酒が終わり、次に流れたのはシックなバラード。
まさかまたゾロかと思ったが、立ち上がったのはサンジ。
「ルフィ、よく聞いとけよ。」

極上の笑みでルフィにそう言えば、ルフィはポッと赤くなる。

サンジは悩みに悩み抜いた結果選出した極上のラブソングを披露した。

「ラブコックだな。」
「聞いてるこっちが恥ずかしくなる歌詞ね。」
「ゾロとはまた違う甘さが…。」

チラリとルフィを見れば、これでもかと言う位赤面していた。
サンジの思惑通り、ルフィはサンジの愛を更に深く理解した。
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