綴語

□船上の歌い手
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フランキーとブルックも歌を披露し、各々持ち歌が5曲ほどあり、サンジも料理や酒を追加したりと賑やかな時間が流れる。

ゾロも最初の1曲こそバラードという離れ業をやったが、後は無難な曲に落ち着いた。
サンジも少しアップテンポな曲も披露し、徐々に宴も酣状態になってきた。

「いよいよ次が最後の曲ですよ。皆さん、何か疑問はありませんでしたか?」

唐突にブルックが言い出した。

「疑問?」
「あ!」

チョッパーが何かに気がついた。

「ルフィ、ビンクスの酒しか歌ってねぇ!」

サンジはクスクスと笑う。

「ルフィはそれしか知らないんだ。だからブルックに楽曲提供たのんでたんだ。」
サンジが説明するが、今度はブルックが笑った。

「確かにルフィさんはポピュラーな曲はビンクスの酒しか知りませんでした。しかし、もっと大きな意味があるのです!!ルフィさん!!」

「おう!」


ルフィは立ち上がり、息を吸い込み目を瞑った。

そして開かれた目に、全員が息を飲んだ。

不敵で、それでいて繊細な。


曲が流れ、響いた歌声は。



大きな痛みを隠しているようで、愛に溢れていて、

ナイーブなボーイソプラノ。

歌詞は、孤独に耐え愛を見つける…そんな歌詞。


全ての感情を吐き出す様に歌うその姿に、サンジは硬直した。
サンジだけでなく、他の全員も、動けずにいた。




(なんちゅー曲提供してんだよ…)


惚れ直すどころの話じゃない。
これで全てが奪われた。


究極のラブソング。


歌い終わり、ふとルフィが周りを見れば、全員が硬直していた。


「んー、またこのパターンかぁ。なぁブルック、俺大丈夫だったか?」

これを知っていたであろうブルックはルフィの頭を撫でた。

「素晴らしかったですルフィさん。ルフィさんの作詞能力と作曲能力は素晴らしです。」


ここで全員が動く。

「え、作曲?作詞?」
「ブルックが作ったんじゃなくて?」


「えぇ、これはルフィさんが10歳の時に作った曲だそうです。」


「はぁあああああああああああああ!!??」



あまりの意外さに、全員が驚愕した。





「うそ…信じらんないわ。」
「すげぇよ!すげぇよルフィ!」
「意外過ぎる。」


全員が喚く中、ルフィはサンジの横に腰を下ろした。

「どうだった?」
「どうも、こうも…。」

今すぐ抱きしめたいです、と呟くと、ルフィは幸せそうにサンジの胸に飛び込んだ。


「あの歌な、ブルックに頼んで編曲してもらったんだ。んで歌詞も少し変えた。」


音楽祭も終わり、深夜のキッチンでサンジが後片付けをしている背中を見つつ、椅子に座りながらルフィは説明する。

「歌詞、変えてたのか。」
「おう、元はエースと二人で頑張ろうって思いで作ったんだけどな。今はもう状況が違うだろ?だからこれを別の形にしようと思ったんだ。」
「別の、形?」




「みんなに出会えた感謝と、サンジに愛してるを伝える歌にしたんだ。」
「!!」


洗い物の手が止まり、サンジはルフィに振り返った。


「サンジ、ありがとう。俺を愛してくれて。」
「ル、フィ…。」
「サンジのあの曲には適わないけど、俺の気持ちは…」


適わない?
そんなの俺の方だ。


あんな、切実な愛が詰まった歌を、











俺は知らない。














「これからも変わらない。愛してる、サンジ。」





幸せそうな笑顔で、笑うから。






「ルフィ、俺も愛してるっ。」


抱きしめたルフィは、細くて。




でも確かに、幸せの香りがした。








「今から、もう1曲歌うよ。サンジだけに。」











流れた歌は、幸せなフレーズ。










緩やかな、俺たちの未来を






祝福していた。









end....
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