綴語

□船上の歌い手
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音楽家が入った事に一番歓喜したのは、想像通りルフィだった。
加えてブルックは楽器全般を扱えると言う事で、フランキーとスピーカーや音貝を改良した大掛かりな録音機能を作り上げ、更なる音楽生活の向上までしていた。

そんな報告を受けたルフィは目を輝かせた。

「じゃあよ、麦わら海賊団の音楽祭やろうぜ!!」


ルフィのこの一言で、クルーは一週間の選曲タイムが設けられたのだった。





クルーは過去の記憶から好きな曲を選出していくのであるが、音楽に興味を抱く余裕すら無かった過去を持つクルーもいるわけで、ブルックに曲を作って提供してくれと言い出す者もいた。


キッチンで煙草を燻らせながら選曲に勤しむサンジだが、流石は元レストランの副料理長だっただけあり、そこそこの流行曲は把握していた。鼻歌を歌いながら、メモ用紙に曲名を書いていき、その中から更に選別していくつもりだった。

ふと、愛しい恋人を思った。
ルフィと付き合い始めたのは、仲間になってから暫くしてから。
ローグタウンのあの処刑台で笑ったルフィを見て、後悔しない内に想いを告げようと決心した。
そして想いの丈を、ルフィに告白した。
ルフィは驚いていたが、すぐに幸せそうな笑顔を浮かべて受け止めてくれた。


クルーからの風当たりはキツくなった。みんなルフィが大好きで、愛しくて。
特にナミとゾロからは、かなりの恨みを買っただろう。
しかしサンジは、それでもルフィを大切にしてきた。
キスをして、身体を重ねて、更に愛しさがこみ上げた。


今回の音楽祭で、サンジはルフィに送るラブソングを考えていた。
サンジは頭の中に浮かぶ知っているラブソングを整理する。
この止まることを知らない愛を、如何にして伝えるか。


それを考えるのが酷く楽しくて、サンジは更に笑みを深くする。



























処変わって甲板みかん畑にて。
ルフィは頭を悩ませていた。
あんな事を提案しておいて言うのもなんだが、実はルフィの知るポピュラーな曲はビンクスの酒しか無いのである。

「ビンクスの酒で引っ張れ…ないよなぁ。」

宴会の席で同じネタをひたすら使い回すことが無謀であることは、宴会大好きのルフィはしっかり分かっている。
だからと言って全員が知ってる曲なんてものは、ルフィの脳内には無い。
ゾロは最初実は渋っていたのだが、その場の空気を壊さない為に快く承諾したフリをし、後々ブルックに困り顔で曲の提供をしてくれと言ったのをルフィは知っている。

「曲…歌…。」

頭は沸騰寸前である。ギアを使ってないのに頭から蒸気が出る思いである。

過去の記憶を試しに引っ張り出してみる。
正直良い思い出ばかりではないし、過去を引っ張り出すということは、必然的に悲しい記憶まで出さなければならない。
歌に溢れた記憶があるのだが、それは後に別れるもう一人の兄の記憶も呼び起こされる。



『ルフィ、お前すごいな!』

『これで稼げるんじゃないか?海賊貯金出来るぞ!』



「あ、」

ルフィはにんまりと笑った。

何も全員の知ってる歌でなくてもいいのだ。
ゾロなんてブルックに曲を作ってもらってる。確かロビンも同じようにブルックに依頼している筈だ。



それならば。


「だとしたら、早く準備しなくちゃな☆」

ルフィは男部屋へと向かった。
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