鬼神に恋した少女

□人から鬼へ
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鬼灯「閻魔大王、只今戻りました」


するとそこに、地獄の各部署を見回りに行っていた閻魔大王第一補佐官の鬼神こと『鬼灯』が戻ってきた。


大王「鬼灯くん、丁度良い所に!!」


鬼灯「どうしましたか?」


閻魔大王は鬼灯を手招きし、少女に聞こえないよう小声で話す。


大王「今裁判してる亡者の女の子なんだけどね、なんか怖いんだよ…!!」(ヒソヒソ


鬼灯「何が怖いんですか?確かに見た目は女性にしては風貌が厳ついですが…」(ヒソヒソ


大王「そうじゃ無くて…(それもあるけど)!!あの子、地獄行きを望んでるような言動をするんだよ。こっちから罪状を提示する前に自分でスラスラ言っちゃうし、その上で地獄へ落としてくれって言うんだよ…」(ヒソヒソ


鬼灯「それは驚きですね…自ら地獄行きを望むとは…。ですが、彼女は生前罪を犯したのでしょう?ならば望み通り…」(ヒソヒソ


大王「そうもいかないんだよ…」(ヒソヒソ


地獄行きにすればと言いかけた鬼灯の言葉を閻魔大王が途中で遮る。


大王「確かにあの子は生前かなりの罪を犯している。窃盗に暴行…殺人…。けど、あの子の生い立ちが生い立ちなだけに、判決に手間取ってるんだよ……」


鬼灯「生い立ち?どの様なものですか?」


大王「あの子、親に愛されなかったらしくてね…一緒には住んでいたらしいけど、まともに面倒も見てもらえなくて日常的に虐待を受けていたみたいなんだよ…。周りからも常に酷い暴言を吐かれたりして、友達もいなくてずっと一人で生きてきたって……」


少女『ああ、そうだよ』


どうやら聞こえていたらしく、突然声を発した少女に閻魔大王はビクッと肩を揺らす。


少女『生きるのに必死だった…盗みだってやったさ。親からはメシなんか与えられた記憶すらねぇ。それでもあいつらが家に居るうちはまだ良かった、家の中に食いもんがあったからな。けど、小学校に入る頃にはあいつら家に帰って来る事も殆どなくなったから当然家の食いもんは底を尽きる、だから盗んで食うしかなかった。邪魔する奴はみんなブッ飛ばしてやったよ』


眉一つ動かさず淡々と語る少女。
そんな少女を見て冷や汗を流す閻魔大王の横で鬼灯は相変わらずの無表情だが、目の色はいつもと違う。
少女をじっと見つめ、質問を始めた。


鬼灯「ご両親はそんなに酷い方なんですか?」


少女『酷でぇどころの話じゃねーよ、マジ殺す気かよってんだ。ま、あいつらからすれば死んでくれた方が助かっただろうな』


鬼灯「助かる?それは何故ですか?」


大王「ちょっ、ちょっと鬼灯くん!!」(汗


遠慮無く深い所まで聞いていく鬼灯に閻魔大王は止めようとするが、少女はまったく気にする様子も無くつらつらと言葉を述べる。


少女『あいつらデケェ借金抱えてたからな…。俺が死ねば生命保険で借金返済出来っし、返済しても釣りが出るから暫くは遊んでられるしな。昔っから「死ね死ね」言われてたし、丁度良かったんじゃねーか?』
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