ペット

□僕の家のルールには従ってもらいます
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夏の暑いある日に突進してきて更に私を飼ってくださいと言われ脅されめちゃくちゃな一日を背負いながら僕は今部屋でその原因の少女…美奈と言い合いをしている。

『やだ!固いもん!ベッドで寝たい!』

「嫌です。ここは僕の家ですよ。言うこと聞けないならでていきなさい」

譲らない僕も大人げないかもしれないが譲る気はない。何故居候にベッドを譲らなければいけないのか。

『いいじゃないですか!ちょっと狭くなるだけ…何がそんなに嫌なんですか?』

「君がベッドで寝るなら必然的に僕がソファーで寝ることになるでしょう」

『え?どうして?』

きょとんとした顔で言う美奈。この子バカなんでしょうか。

「まさか同じ布団で寝るつもりですか?」

『だってそれ以外に…』

流石にそれは駄目だろうとタオルケットを美奈に投げつける。

「とにかく、君はソファーで寝なさい。分かったらさっさとお風呂にはいりなさい」

きっぱりそう言うとええ…とまだ不満そうだったが渋々と脱衣所に向かう。
どんな環境で育てばこうなるんでしょかねぇ…。一緒に寝たりすればPTA的なものから通報されますよ僕。

美奈がお風呂に入っている間にパソコンを立ち上げ、美奈について少しだけ調べる。…がこれといってなにも情報がつかめない。

お風呂あがりましたーと間の抜けた声が聞こえたのでリビングへ向かう…とタオル1枚という驚愕の姿で立っていた。

『あ!お風呂とても気持ち良かったです!』

「………」

幼い顔立ちの割にしっかりと成長した身体。まあ高校生だから当たり前か。急いで部屋に戻り早く着なさい!とスウェットを投げつける。流石に目に毒だ。

『ええー…暑い…』

暑い、じゃない。今度こそPTAに訴えらえるわ。

「暑くてもなんでも服は着なさい!それがこの家のルールです!」

ぷくっと頬を膨らませる美奈。反抗期を迎えたお父さんてこんな気持ちなんでしょうかね…。

そんな美奈を軽く無視してお風呂にはいろうとする。

「…今からお風呂入ってきますけど、部屋荒さないでくださいね」

『あっ!?荒したりしませんよ!失礼な!決して物色しようなんて思ってませんから!』

少しだけ顔を赤らめて言う。釘を刺しておいて正解だった。物色するつもりだったのだろう。

風呂からあがるとすーすーと規則正しい息の音。そっとソファーを覗いてみると、頭をタオルケットで包み込み丸くなって寝ていた。頭隠して尻隠さずとはまったくこのことである。
…疲れてたんでしょうか。
このままでは冷えてしまうと顔からタオルケットを引っぺがし全身にかけてやる。

無防備な寝顔。寝ていると幼い顔が更に幼く見える。

子供のような寝顔にそっと頭を撫でてやる。

「…君は一体何者なんでしょうか」

もちろん返ってくるのは規則正しい寝息だけ。黙っていれば可愛いのに…。くしゃくしゃと頭を撫でる。

『……お…姉ちゃ…ん…』

ぽそ、とこぼれた寝言。お姉ちゃん、と言ったのでしょうか。
お姉ちゃん、か。これは彼女の身元を割り出すのに重要なヒントになりそうだ。

「おやすみなさい、美奈」

可愛い寝顔をあと少しだけ堪能してからリビングの電気を消してやる。明日は取り敢えず彼女の日用品を買いにいかないと。ふう、と小さくため息をついてから僕も布団にはいった。


140801

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