ペット

□secret: LOG 1
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“某月某日

今日は私の14回目のお誕生日。
お姉ちゃんのお母さんから素敵なノートを貰ったので、これから日記をつけていこうと思います。何日続くか分からないけど。

今日はお姉ちゃんと、パパと、お姉ちゃんのお母さんと4人で素敵なレストランに行きました。
最後におっきなケーキをプレゼントしてくれて、とっても嬉しかったです。





某月某日

今日はお姉ちゃんとお庭の薔薇園で遊びました。薔薇園はもうすぐ満開です。
今日、なんだか昔のことを思いだしました。
お姉ちゃんのお母さんと友達だった「ゆきこ」さんは最近遊びにきません。
「ゆきこ」さんの子供の名前がどうしても思い出せません。
私の麦わら帽子をとってくれた男の子。なんて名前だったのかなぁ。






某月某日

お姉ちゃんのお母さんに、「いい加減お姉ちゃんのママ、って呼ぶのはやめて」と言われました。
ママって呼んでもいいの?って聞いたら「当たり前じゃない」って笑顔で返してくれました。
これからはお姉ちゃんのお母さんのこともママって呼ぶことにします。

私の本当のママはもう死んじゃったけど、今のママはとっても優しいからちっとも寂しくありません。






某月某日

食堂の意地悪なお姉さんに、「あなたってめかけのこよね」と言われて笑われました。
めかけのこってどういう意味なのかなぁ。
お姉ちゃんは分からないって言って、ママはそれを聞いたとき、すごく怖い顔をしてそのお姉さんは誰?って聞いてきました。
だけど、意味は教えてくれません。
めかけのこって何だろう?






某月某日

ママの身体の調子がよくないみたいで、お医者さんが屋敷にきていました。お姉ちゃんは多分風邪でしょって言ってました。だけど心配です。






某月某日

ママの風邪が良くなるように、お姉ちゃんと街に買い物に行きました。
お姉ちゃんは私と10歳も離れているから、とっても大人っぽくて綺麗です。
私もいつかあんな風になれるのかなぁ。






某月某日

ママの体調は、全然よくなりません。
最近は歩き回るのがしんどいみたいで、ずっとママのお部屋にこもっています。
パパにママは病気なの?って聞いたけど、教えてくれません。
お姉ちゃんはママのこと、知ってるみたい。
私はまだ子供だけど、本当のことを教えてほしいです。ママが早く元気になりますように。





某月某日

ママのお部屋にお花を飾りました。
ママはずっと寝ていて、私がお花を生けてても起きません。
だけど夕方には目を覚まして、少しだけお喋りをしました。
ママは起きているだけで辛そうでした。ママは病気なのかな。だけど久しぶりにいろんなことを話せて楽しかったです。





某月某日

お医者さんとパパとお姉ちゃんがお話していて、その後お姉ちゃんはずっと泣いていました。
お医者さんがお姉ちゃんのこと意地悪したのかな。だけどお姉ちゃんにそのことを聞いても、お医者様は悪くないのよって言うばかりです。

泣いているお姉ちゃんを見るのは苦しいです。パパに相談したら、そっとしておいてあげなさいと言われました。
パパもなんだか悲しそう。ママの身体はいつよくなるのかなぁ。





某月某日

昔、ママとお姉ちゃんと3人で言ったお花畑に行ってきました。お姉ちゃんも誘ったけど、外に出たくないって言われちゃった。
ママとお姉ちゃんが早く元気になるように、2人が大好きなお花をいっぱい買いました。
そう言えば、今日嫌な感じの女の人とぶつかりました。
向こうがぶつかってきたのに、落ちたお花を拾ってもくれませんでした。
それから、その人に久しぶりにめかけのこ、と言われました。
めかけのこってどういう意味?って聞いたら
「愛人との子って意味よ。可哀想な子ね」って笑われました。
めかけのこってあんまりいい意味じゃないみたい。





某月某日

ママが少し元気になった気がします。私のお花のお陰かなってお姉ちゃんに言ったけど、お姉ちゃんは笑ってくれませんでした。
ママはずいぶん痩せました。もう少し食べて太ればいいのに。
ママのお部屋は、薬の匂いがとってもキツクて息苦しいです。






某月某日

ママとお喋りをしました。お姉ちゃんも誘ったけどお姉ちゃんはお部屋からでてきません。

ママは私に心配かけてごめんね、と言いました。謝らなくてもいいのに。
パパとお姉ちゃんを支えてあげてって言われたから、任せて!って言いました。パパもお姉ちゃんも大好きだから、絶対に私が守るって言ったらママは嬉しそうでした。

大切な人も、大切な時間も、思い出も、失ってからでは遅いから、しっかり噛みしめないと駄目よ。
そして、大好きで、大切な人と結婚して、私は今幸せですって胸を張れるような家庭を築きなさい。って言われました。
結婚とか、私にはまだまだ遠い未来のような気がするけど、ママの言葉を大切にしたいです。


ママのお部屋から出たら、お姉ちゃんが私にお母さんなんて?って聞いてきました。
聞くくらいなら一緒にお話ししたらよかったのに。

そういえば、またママに「ゆきこ」さんの子供の名前を聞くの忘れてた。
まぁ、明日聞けばいっか。






某月某日

ママが亡くなりました。雨がいっぱい降りました。お姉ちゃんはずっと泣いていました。私もいっぱい泣きました。

朝、眠るように息を引き取ったらしいです。
だけどお姉ちゃんも、パパも、もうママが永くないことを知ってたみたいです。
最近元気だったのは、全部薬のお陰だったみたい。
だからお姉ちゃんは泣いてたんだなぁ…。

お姉ちゃんはさっきまで私をぎゅってしてずっと泣き続けてました。まだ抱かれていた肩が温かいです。
ママに言ったから、私がお姉ちゃんを守らなきゃ。

ママ、今どこにいるのかな。
でも天国には、私の本当のママもいるから、きっと寂しくないよね。

お姉ちゃんもパパも、私がちゃんと守るから心配しないでね。ママ、さようなら。”







150117

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