ペット

□ secret: LOG 2
1ページ/1ページ








“某月某日


今日はお姉ちゃんを誘ってお花畑にいきました。最初の方は元気なかったけれど、最後はやっと笑ってくれました。
沢山沢山カップルがいました。私もいつか男の人とお付き合いしたりするのかなぁ。
お姉ちゃんは好きな人とかいないの?って聞いたらそれは怖いことだって言ってました。
どういうこと?って聞いたらまだ早いって言われちゃった。
もう私だって子供じゃないのに。






某月某日


パパはママが亡くなってからずっとお部屋にいます。
今日、パパのお部屋にお花を持っていきました。パパは嬉しそうに私の頭を撫でました。それから、また泣いていました。
パパは泣き虫だから、私がパパを守ってあげなくちゃ。





某月某日


久しぶりにパパとお姉ちゃんと、3人で夜ご飯を食べました。
パパがお姉ちゃんにお見合いをする気はないか、と聞いていました。
お姉ちゃんはちゃんと自分で見つけてくるからって言ってました。
パパはそれがいい、って笑ってました。ママはいないけど、なんだか昔に戻ったみたいで楽しかったです。





某月某日


今日、お庭を知らない女の人が歩いてきました。
誰かなぁと思ってよく見てみたら、ぶつかってお花を拾ってもくれなかったあの嫌な感じの女の人でした。
パパにだぁれ、と聞くと、パパの秘書になる人らしいです。
パパやみんなにはニコニコしてるけど、私はあの人、嫌い…。





某月某日


お姉ちゃんにあの女の人のことを相談してみたけれど、お姉ちゃんはいい人じゃない、としか言いませんでした。
本当にいい人?でも確かにあの人のお陰でパパの会社は上手くいってるみたい。
私の気のせいかなぁ。あの時の人とは別人なのかな?
だけどひとつだけ、あの人は私に向かっては笑いかけてくれません。





某月某日


パパは会社が忙しいみたいで最近お家に帰ってこないから暇です。
そういえば最近、お姉ちゃんにボーイフレンドができたらしくて、毎日目をキラキラさせてお話してくれます。
こっちに留学してきている日本人らしくて、写真も見せてもらいました。
お姉ちゃんのお話を聞くのはとっても楽しいです。





某月某日


お姉ちゃんは最近とっても綺麗になりました。
私からみてもうっとりするくらい肌もつやつやで、明るいオーラがでています。
いいなぁ、素敵。私もあんな風になりたい。





某月某日


パパとあの女の人はいつも一緒です。そりゃあ、秘書さんなんだから仕方ないと思うけど…なんだか、…パパにくっつきすぎ…な気がする。




某月某日


お姉ちゃんがボーイフレンドをお屋敷に連れてきました。てっきりパパは喜ぶかと思ったのに、パパは難しい顔をしていました。
最近のパパはなんだかヘン。ちょっと怖い顔をしています。




某月某日


お姉ちゃんが悲しそうにしていました。パパにボーイフレンドのことを反対されたみたい。ちょっと前まではお姉ちゃんが自分で見つけてこればいいって言ってたのに…。
お見合いの話がまたあがってるみたい。ボーイフレンドはどうするのって聞いたら、仕方のないことだから、ってお姉ちゃんは悲しそうに笑っていました。
悲しそうなお姉ちゃんは、なんだか見ていられません…。




某月某日


お姉ちゃんは最近ずぅっと、窓の外を眺めています。
ボーイフレンドのことは、怖くて聞けません。お姉ちゃんはずっとお屋敷に閉じ込められています。
昨日の夜、パパと喧嘩したみたい。…それでボーイフレンドともう会わないように、お姉ちゃんはお屋敷に閉じ込められて…。
どうしちゃったんだろう、パパ。昔はあんな怖い顔しなかったのに…。




某月某日


今日もお姉ちゃんは窓の外を眺めています。泣きもしない。笑いもしない。私には笑いかけてくれるけど、なんだか諦めたような、疲れたような、そんな笑顔だけ…。
パパはお仕事で全然お家にいないし、やっぱり私にはママみたいにお家を守ることができません…。




某月某日


街に買い物に行きました。お姉ちゃんは外に出られないのでひとりぼっちです。
適当にぶらぶらと歩いていると、お姉ちゃんのボーイフレンドに会いました。
彼はなにも聞かされていなかったみたいで、お姉ちゃんが閉じ込められているって聞くとすごくびっくりしていました。
お姉ちゃんはまだずっと、あなたのことが好きだと思うって伝えたら、彼は泣いて喜んでいました。

彼に手紙を貰いました。帰ってお姉ちゃんにこっそり渡すと、お姉ちゃんは声をあげて泣いていました。
あんな風にお姉ちゃんが泣くところ、初めて見たかもしれません。




某月某日


一晩中お姉ちゃんは泣いて、やっとお部屋からでてきました。
前よりずっとすっきりした顔をしてでてきたのでほっとしました。
お姉ちゃんは言いました。
「美奈は自由に生きて。何にも縛られず、好きな人、大切な人を見つけて、それを貫き通して。犠牲になるのは私だけで十分だから」って。
お姉ちゃんは、やっぱり泣きました。




某月某日


もうすぐママが亡くなってから半年が経とうとしています。速いのか、遅いのか。私にはよくわかりません。
お姉ちゃんは綺麗なお洋服を着ていました。明後日はお見合いらしいです。せめて、お姉ちゃんにとっても優しい人だったらいいなぁ。




某月某日


お姉ちゃんが倒れました。明日はお見合いなのに、お昼ご飯を食べた後、急にふらっと倒れました。
お見合いはもう少し先のことになりました。お姉ちゃんは熱が高くて苦しそうです。
風邪、だったらいいな。だけど…とってもとっても不安で、…怖くて眠れません。




某月某日


お医者さんのところに行きました。本当のことを知りたかったからです。
最初は教えてくれなかったけれど、何回も何回も尋ねたら、お医者さんはやっと教えてくれました。
お姉ちゃんは、ママと同じ病気なんだって。
怖い予感が当たっちゃった。…だけど、お姉ちゃんはまだ若いからもしかしたら治るかもしれないって。
ママ、神様。お願い。お姉ちゃんを助けてください。




某月某日


お姉ちゃんのお部屋に行きました。顔色は良くて、元気そうでした。
お姉ちゃんは自分のこと、知ってるのかな。
お姉ちゃんは私を抱き寄せて、何度もごめんね、ごめんね、と言いました。
どうしてお姉ちゃんが謝るんだろう。お姉ちゃんは何も悪いことしていないのに。
どうしてママや、お姉ちゃんがこんな目にあわなくちゃいけないの?
お姉ちゃんが涙声でごめんねって謝るから、私も泣いてしまいました。




某月某日


パパを久しぶりにみました。なんだか雰囲気が前までとは違っていました。
とってもとっても冷たい目。その横にはあの女の人が寄り添うみたいに歩いてました。

女の人は私をちらっとみて、馬鹿にしたみたいに笑いました。
それから静かに私のところにきて、こう言いました。

「私、あなたのママになるから。よろしくね」

握手した手が、妙に温かくて嫌でした。
ママになるってどういうこと?お姉ちゃんも倒れちゃったし、…これから私はどうなるんだろう。”








150223

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ