短編
□とある帰り道
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『はぁぁ…かっこよかったなぁ……ねぇ?聞いてるの?蘭!!』
華のセブンティーンをむかえました私、七条瑠璃、ただいま恋の季節真っ盛りでございます!!
「聞いてるってば!昨日の夜アルバイトから帰ろうとしたら大雨が降ってて、意を決してその土砂降りの中帰ろうとしたら、すっっっごくイケメンのお兄さんが傘を貸してくれて、そのうえ危ないからって家の近くまで送ってくれて、もうあとちょっとで家に着くって距離なのに傘を瑠璃ちゃんに持たせたままその人は大雨の中走って帰った話でしょ!?」
『そう!そうなの!その通り!なんで知ってるの!?』
「瑠璃ちゃんが朝から10回もその話したからよーっ!!!」
私の可愛くて強い愛しい蘭ちゃん(新一なんかに渡すもんか)に朝から何度も何度も昨日の話をしている私。
いや、してるっていう意識はなくて…気が付けば話してるっていうのが正しいと思う。(蘭からしたら大迷惑だろうが)
『でねっでねっ!!!ほんっっとうにイケメンだったんだから!!!そりゃもうあんたのダンナなんて比じゃないくらい!』
「だ、ダンナって…新一はそんなんじゃ…」
『誰も新一なんて言ってないけどね?』
「なっ!もうっ!瑠璃ちゃん!!」
『それでねぇー…私、どーしてもそのお兄さんに会いたいの!一度でいいから!』
「会いたいって…名前も何も知らないんでしょう?」
『そうなのよ…。ドキドキしすぎて連絡先も名前も聞き忘れるなんて七条瑠璃一生の不覚だわ…。
でもねっ、蘭のダンナ、探偵でしょ!?きっと新一ならパパっと居場所を割り出してくれると思うのよねー』
「え…それはいくら新一でも…」
『いいから!早く電話してみて!』
「会ったこともない人を見つけるのは、いくら名探偵の工藤新一でも難しいでしょうねぇ」
『そんなことない……え?』
聞きなれない、でも確かに聞いたことのある声。
ふ、と振り向くと恋焦がれていた彼の姿。
神様女神様仏様。私は今なら死んでも構いません。
「あ、安室さん!」
「こんにちは、蘭さん…と…」
そう言いながら私に目をむける彼。目があっちゃったもうかっこいいんだよ君の瞳は一億ボルトですよお兄さん。
…ん?アムロさん?蘭さん?
『ちょちょちょ!?蘭!!!?このおにーさんと知り合いなの!?!?」
「え…まぁ。…ってもしかして瑠璃ちゃんが言ってる人って…」
『イエスアイドゥー!!このお兄様です!!!!』
「え…、と、失礼ですが、どこかでお会いしましたっけ…?」
申し訳なさそうな笑顔を浮かべながら私に問うアムロさん。
ガラガラと音を立てて身体が崩れそうになる。あんなことをしておいて覚えていないなんて本気と書いてマジですかお兄さん。
『うぇえ…昨日傘貸してくれたじゃないですかぁ…』
「あ、貴女、でしたか」
貴女でしたか!?アムロさんにとって私はそのくらいちっぽけなアレだったんですね…。瑠璃ちゃんショック。今日の夜ご飯は大好きなから揚げにしてもらおう。
「これは失礼しました…。改めて、僕の名前は安室透。喫茶ポアロで働いています。よろしければ…貴女の名前を教えてくれませんか?」
あ、喫茶ポアロ…。どうりで蘭と…。
透さんね。図々しく下の名前で呼んじゃおう私をたぶらかした罪だわ。
安室透ってもう名前からしてね、かっこいいんですよ。もうみてるだけでよだれ出そうなくらいかっこいい。どうしようもう失神しそうだ。
ジロジロとなめまわすように見ている私を怪訝に思ったのか、「あの…?」と口を開く透さん。彼は今私に向かって話してるのだろうか。もうなんか頭の中ぐるぐるしてきた…
「あ、こ、この子は七条瑠璃ちゃんで、私の友達なんです」
「そうですか。瑠璃…さん。よかったらポアロに遊びに来てくださいね」
な、名前呼ばれた。遊びに来てくださいだって。心臓ぶち抜かれました。やっぱり今日の夜ご飯は赤飯にしてもらおう。
それでは用事がありますので、と去っていく透さん。後姿までイケメンだわ…。
これから蘭の家に行くとかを口実にポアロに通い詰めてやる。
七条瑠璃、恋の花道、一歩前進でございます。
140713