短編

□恥ずかしいことはやめてください
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「瑠璃ちゃん、今日の夜僕と…」

『はい?市丸隊長?なんでしょう』

「ご飯でもいかへ…」

「瑠璃君!悪いけど、この書類頼めるかい?」

『あ、はい吉良副隊長!今行きます!隊長、すみませんがまた後で…』

「あ、ちょ、瑠璃ちゃん?」

「おーい瑠璃ー。悪ィがその書類片付いたら編集部に顔だしてくれ」

『分かりました!檜佐木修兵!』

「副隊長をつけろ副隊長を」


今日も忙しい三番隊
皆、慌ただしく動く中、ギンだけはひとり不機嫌そうである。


「あ〜あ、もうやる気なくなってもうたわぁ」

自分の席に腰掛け、ううんと伸びをする。
目の前には書類の山。これ、絶対僕がせんでもええやん。一番上の書類をちらりとみて山に戻す。

「隊長!お願いですから仕事なさってください!」

「なんやのん自分。僕の瑠璃ちゃん盗っといて」

「盗ってません…」

「ホンマ、イヅルにしても九番隊副隊長はんにしても、僕の瑠璃ちゃんを許可なく使い過ぎやわ」

『いつから私が隊長のものになったんですか!?あ、副隊長、この書類終わりました』

「相変わらず仕事が早くて助かるよ」

『ぐーたらな上司をもつとしっかりしなきゃって思いますからね〜』

「なんや、誰の話してんねん」

『さあ、誰でしょう』

「アカン!上司に口のきき方なってないわ!お仕置きや、こっちきい!」

ぐいっと瑠璃ちゃんの腕をひっぱるも、ひらりとかわされてしまう。

『イヤです。隊長のお仕置きって、なんか性質悪そうですもん。それより副隊長、ほかに仕事は…』

僕の相手は〜?とぶちぶち文句を垂れる隊長に、全部終わったら相手してあげますから、と諭す。
これじゃあどっちが上司が分からない。

「…あ、ありがとう、瑠璃君。さっきので一通り片付いたみたいだから、今日はもう終わってもいいよ」

…なんだと。てっきり今日は残業レベルの仕事の量だと思ったから全部終わったら相手してやる、なんて言ってしまったじゃないかい。
目の端では隊長がホンマ!?イヅル最高やな!と叫んでいる。嘘や。しかも最高なのは仕事を頑張った私だ。

『あ!だめです!私、九番隊にいかなくちゃ…』

先程言われたことを思い出し、ラッキーと言わんばかりに声を張り上げる。
いつもは檜佐木この忙しいときにふざけるなばかやろうと思うのだが、今日ばかりは天使に思う。69なんて卑猥なことを書いている天使を天使と呼びたくはないが。

「あかん!またあの瑠璃ちゃんにべったりな檜佐木君に会いに行くんやろ!?」

『べったりって…ただの幼馴染ですから』

「それがべったりって言うんや!」

これ以上隊長の相手をしてても仕方がないなあと思い、ささっとその場を後にする。私を大声でよぶ隊長の声が聞こえた気がしたが、私は何も聞こえない。聞いてません。


『はぁ……』

九番隊まで走りながら、自然と出てくる溜息。
実はああやって、市丸隊長に絡まれるのは嬉しくも複雑な気持ちだったりする。
隊長は好き…。だけど、隊長のあの絡みは…


『他の人にもやってるよなぁ…』

「何が?」

『ぎゃあああああ!!!』

背後で声がして思わずひっくりがえる。ばっと身体を起こすと市丸隊長の姿。

『ひぇ…市丸隊長…いつからそこに…』

「ひぇ、って言いなや」

吃驚した。どのくらい吃驚したかと言われれば、自転車に乗った時サドルが急にストンと落ちた時くらいびっくりした。あんまりびっくりしないだろうそれとか言うやつは死刑。


「ずっと瑠璃ちゃんのストーカーしててん」

『いやストーカーしないでください』

ということは最初からいたのか…。ぱんぱんと死覇装をはたき、ここまで気配消せるなんてさすが隊長格だなあと思う。

「ほんで?何が他の人にもやってると思うん?」

ニタニタと笑みを深めながら、一歩ずつ壁に追い詰められていく。
思い切り走るために人の通らない廊下を選んだのは間違いだったぜ、と心の中でわざと明るく振舞ってみるが何も解決しない。
どんと壁が背に当たり、追い詰められる。
こんな心臓に悪い壁ドンはなしだ。隊長め、初めての壁ドンが最悪の思い出になっちゃったじゃないか…

追い詰められたのに、更に近づいてくる隊長。もう私、今なら壁と一体化している気がする、ってくらい壁にくっつく。近い近い近い近い。なにこれやばくね。

「ちゅー、していい?」

ちゅー、だと?!言い方可愛いなとか思いつつ、首を横に振る。他の大勢の中のひとりなんて嫌だ。

「なんで?僕のこと嫌い?」

嫌いじゃないです。むしろ好きです。でも嫌なものは嫌だ。

『嫌いじゃないです…好きだから嫌だ…』

待て、何私ぽろっと本音言っちゃってんの。顔が熱いのは気のせいだと思いたい。自分気持ち悪っ!そんなキャラじゃないだろ!!

ふと気づいたとき唇に柔らかい感触。え、え、え、もうパニックだ。

「心配せんでも僕、瑠璃ちゃんにしかこういうことせえへんよ…」

もう私過呼吸気味。何が起こったのか理解できない。多分今隊長とせ……接吻した。大切な初めての…。

「あらら?初やった?」

真っ赤になって口をぱくぱくさせる私ににやにやと笑う。

「したことないんやったら、もっと練習しなアカンな」

ずいっと顔を近づけてくる隊長。
もう無理!恥ずかしさに耐えきれないと隊長を突き飛ばして走り出す。

走りながら、唇にそっと手をやる。初めてが隊長だなんて…それよりも、私にしかこういうことしないって…
かあ、と顔がまた真っ赤になる。恥ずかしさをかき消すように隊長のばか野郎!!!!!と叫ぶ。

道行く隊士たちが驚いて私の方を見る。なんだ!私が不審者だとでもいうのか!!
はい間違いなく不審者です。冷静に自分に突っ込みをいれつつ、九番隊隊舎へと向かった



140721
続くかも?

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