短編

□○○を殺すセーター
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<赤井編>



「こんなものが流行っているらしい。お前に似合うと思ってな」


多分、というか絶対このスナイパーは変態だと思う。
仕事帰りに家に来てくれると言い、楽しみに待っていたらあろうことかプレゼントまで買ってきてくれた。
この一見するととんでもない冷血で淡白そうなスナイパーが、だ。思わず泣きそうになった。
普段からは想像もつかないその行動に感動して、心躍るままにプレゼントを開けてみるまでは。

そこからは別の意味で泣きそうになった。


『ちょっ…秀、なに。これ』


「童貞を殺すセーター、なるものらしい。今どきの若者はこういうのを着るんだってな?」


もう発言がすっかりおじさんだ。そりゃ30を超えているんだから優に若者では無いのだが。

それにしてもいらないことばっかり取り入れてくる、このおじさんは多分間違いなく変態だ。


『ねえ前から思ってたんだけど秀ってバカだよね?なんなの?死ぬの?』


「随分嫌がるな。そんなに着るのが嫌か?」


にやにやと笑いながら言ってくるってことはコイツ、絶対分かってやってる。悪戯っ子のように目に妖しい光を宿しながら笑っているときの秀は本当に危険だ。でもちょっとカッコイイのがムカツク。


「着替えるの、手伝おうか?」


『あーもう!分かったわよ!…着るからあっち行ってて…』


秀を部屋から追い出し渋々それを身に纏う。
このセーターの存在はもともと知っていた。へえ、こんなのあるんだぁ、と画像を見ていたがそのあまりの破廉恥さに、そして一部の女子に喧嘩を売っている着こなしにそっとサイトを閉じたのを覚えている。

…なにが童貞を殺す、よ!こんなの、こんなの、こんなの…!!!


『…着たわよ。文句ある…』


恥ずかしながらもそれを着て秀にお披露目をする。胸もお尻もスース―する。こんなの着こなせるやつ日本人にいるのか!?というくらい胸も尻もガバガバだ。最早服の意味を成していない。


「完全に着られているな、服に」


『…分かっててやったでしょ…!!!』


そう、この服が自分に絶望的に似合わないことは初見で分かり切っていた。そして秀がわざわざそんな服を買ってきた時点でこの変態スナイパーの考えもお見通しだった。
要するに私の貧相な体型で遊びたかったらしい。


『もう!満足した!!?もういいでしょ!!着替えてくるから…』


「おいおい、せっかく買ってきたのにそれはないだろう」


逃げられないように後ろから抱きしめられる。ぷんぷんしている私を宥めるような声が耳元で囁く。


「思ってた通りだな」


『…思ってた通り似合わなかったでしょ』


「いや」


秀は当たり前かのようにするりと開いた脇腹部分から手を入れてきた。後ろで秀がニヤニヤしているのが分かる。


「逆にエロいな、この服。どうやら殺せるのは童貞だけじゃなかったらしい」


やっぱりこのスナイパーは変態だった。



170201
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