トタン
□目が覚めたら
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温かい……。
ふと次に浮かんだのは、その感情だった。
私は…雪の中で…。確か、倒れて、そのまま…。
なのに酷く身体が温かくて、心地よくて、安心する。
『…………』
私…生きて、る?
恐る恐る重い瞳を開けてみる。目に飛び込んだのはオレンジ色の優しい光。そしてその温かい光の中、優雅に紅茶を啜っている金髪の男の人。
誰…?何?私は一体どうなったの…?
反射的に身体を起こそうとしたが、左腕がズキンと痛み、再び倒れこんでしまった。
「ん?……ああ」
物音に気がついた男の人が振り返る。青みがかった瞳の色がとても綺麗で、思わずどきりと心臓が跳ねた。
「良かった…気が付いたんだね」
優しげな声でそう言うと、頭を優しく撫でられた。いきなり何をするの!!と叫びそうになったが今は機敏に反応できる元気も残ってはいない。
それにしても…手の大きい人ね。
すっぽりと頭を包まれるような感覚に、安心するような、緊張するような。ていうかこの人チャラい…。助けてくれた人を悪く言うのはナンだけど、初対面の人の頭を撫でるしなんか顔も近いし…。
「ん…まだ手は動かさない方がいい。車にでも引かれたのかい?…猫ちゃん」
………は?
猫ちゃん、ってどこの売れないホストみたいなことを言いだすのこの人は。ていうかこの人ホストなんじゃないの?髪の色おかしいし、イケメンっちゃイケメンだけど…なんかチャラいし、やけに近いし…。
「身体も少しは温まったかな…」
彼はそう言うと、するりと毛布の中に手を入れてきた。脇腹の辺りに手を乗せられる。ちょ、っと…!それは流石にダメ!ホスト怖い!そう思い、反射的に手を振り払おうと、かろうじて動かせる右手を動かしてみるのだが…。
『………?』
…なんだこれ。
振り払おうと彼の大きな手に乗ったのは、何故が人間の手では無く、モフモフとした獣の足。
「あぁ、ごめんね。猫は身体を触られるのは嫌いだもんね…頼むから爪は立てないでくれよ」
……は?猫?は?え?え?
恐る恐る、感覚上は「自分の手」と認識している手を目の前に持ってきてみる。
…猫の手だ。
目を何度かぱちくりさせてみるのだが、何度瞬きをしても、目前にあるのは愛らしい肉球。
ぐ、と力を入れてみると、その肉球は当たり前のようにグーを繰り出した。
「はは、どうしたんだい?もしかして反省してるのかい?君は随分頭の良い猫だね。まぁ車に跳ねられるくらいはドジのようだけど」
お兄さんが何かを言っている。今…まさかね、またお兄さん…「猫」って言った?はは…そんなまさかね…そんな漫画やゲームの世界みたいなこと…。
ふと顔を上げるとすぐ目の前にあるスカイブルーの瞳。その大きく透き通った瞳に映っていたのは…。
『ニャ……アアァアアアアッ!?!?!』
紛れも無い、白地に黒や茶のまだら模様の入った、猫の姿だった。
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