安室狂愛

□冬の月
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「…うーっ!寒い寒い寒いっ!なんでこんなに寒いんだよーっ!」

『12月だからねー…真純は寒がりだねっ』

「寒がりじゃなくて薄着なだけさ…」

『…なんで厚着してこなかったの?』

イルミネーションが木々を彩る並木道。私と真純はふたりでゆっくりとその道を歩いていた。

「ったく…どこ見渡してもカップルしかいないし…クリスマスは外国だけでじゅーぶんだってのに」

『いいじゃない!イベントがあった方が楽しいじゃん?』

「カップルはねェー…」

じとっと私を見つめる真純にえへへ、ととぼけた笑みを浮かべてみる。

「…今日で丁度二ヶ月、か」

『あ、覚えててくれたの?真純大好きっ!』

「当たり前だろ!でもま、そのセリフはボクじゃなくてアノ人に伝えればーァ?」

『もう…すぐそーいうこと言うんだから…』

びゅう、と一際強い風が吹き抜け、寒っ!と身体を縮こまらせる。

「…それでどーなのさ?その、調子っていうか…」

『え?まぁ、その…順調だよ』

「あ!赤くなった!」

『もう!からかわないで!』

「まだ二ヶ月…もう二ヶ月…どっちだろうな。あん時は吃驚したよ。ボクが殴っちゃって倒れて…あいつの部屋に運んでさ、コナン君と二人で居間で待ってて…。あいつの部屋で物音がするからそーっと覗いてみれば抱き合ってキスしてんだからさ」

『……ふふっ』

ぼ、ボク達お邪魔みたいだね…と真っ赤になって固まっていた二人を思い出し笑みが零れる。

「何笑ってんだよー。でもあん時はホント悪かったな。殴っちゃって…」

『もー!その話はあの時散々したでしょ!でも…ふふっ!あの時の真純、おもしろかったなぁ…。もういいって言ってるのに100回くらい謝って、止めに入ったコナン君にボクの問題だから邪魔するなーっ!って逆切れして…』

「なんだよ!そのくらい悪かったって思ってたんだから仕方ないだろ!」

『だからもういいって!…誰も悪くないよ』

そう、誰も悪くない。今は心からそう思えた。

「そうだな…。あ、今日はこのままあいつと夜ご飯にいくんだろ?」

早々と沈んでいく夕日を眺めながら、ニッと笑って真純が言った。

『うん…よく分かったねぇ』

「記念日だし、いつもよりおめかししてるしな!それでさ…これ、記念日だから…」

少しだけ照れくさそうに、鞄から袋を取り出す。中には二つ、対になった可愛いストラップが入ってた。

「…その、良かったら…ふたりでつけ」

『もーっっ!可愛いっ!真純最高っ!大好きっ!』

おずおずと差し出す姿に、またその優しさに可愛さと感動を覚えてばっと抱きつけばやめろよっ!と今度は耳まで真っ赤にして言う真純。

『ごめんごめん…あまりの可愛さについ…。でも、本当にありがとうっ!大切にするね!』

「そうか!?気に入ってくれてよかった!」

にこっと満面の笑みを浮かべる真純にまた抱きつきたくなる。

「…じゃ、ボクこっちだから。また遊ぼうな!」

『うんっ!これ、本当にありがとうね!』

ストラップをひらひらと上にかざせばおうっ!と嬉しそうに答え、じゃあな!と角を曲がる真純を見送る。

『…わぁ、雪…』

約束の場所へ歩き出そうと方向を変えると、ひらひらと雪が舞い落ちる。だけどそれはほんの一瞬で、すぐ止んでしまう。
…見たかな、この雪。
ふふ、と高まる気持ちとこぼれる笑みを抑えて、イルミネーションの中をかけていく。
遠くの方で、あなたの姿が見えた。
あなたも私に気付いたようで、ぱっと手をふってくれる。

『お待たせ!待った?…透!』

ぎゅっともらったストラップを大切に抱きしめながら、あなたの元へ。

空には、雲の切れ端からそっと、満月が顔をのぞかせ、ふたりを包んでいた。



fine.


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