アメリカ編

□クリスマスイブの雪
5ページ/15ページ

退院して家に帰った後すぐ、俺はもう一度魔導書を読んであのページを探した。
もう一度あの世界に行くために、…もう一度、あの「アメリカ」に会うために。
しかし、「夢の世界に行く方法」を記したページだけ、誰かが破りとっていた。
俺が病院に入っている間に、誰かが俺の家に入って破りとったに違いない。
でも、誰が?
その期間に入った者は、部下、警察、救急隊など沢山いるのだ。
俺は絶望した。
あの魔法はあの魔導書にしか書いてなかったのに。
俺には一応政府を動かす権限もあるにはあるが、だが、重要な国家機密の書類ならともかく、たかが魔導書のページ一枚。
誰がそんなもの探してくれるだろうか。
それにあの魔導書はとある偉大な魔術師に頼み込んで書いてもらった一品物だ。
その魔術師はこれを書いてすぐ死んだのだから、代わりなんてない。
今の魔術師なんて偽物ばかりだ。
妖精達に聞いても無駄だろう。
彼らが知っているのは生来彼らが持っている、いたずらやちょっとした手助けや自然の営みを正すための魔法。
こんな手の込んだ、その上破綻している魔法など知るはずもない。
俺は二度と、あの「アメリカ」に会えなくなったのだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ