ベ テクファト・ハ ミクラ(完結済)

□べレシート2
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「アダムから知恵を奪うことにする」
マラク達が集まった前で母がそう言ったのは、それから数年後のことだった。
アダムはまだ(!)名前をつける以外に言葉を話せなかったし、理解することもできなかったので辺りをきょろきょろ見回しながら微笑んでいたのだが、それもあってマラク達からは反対の声が上がった。
しかし。
「僕は賛成するよ」
本来なら一番反対するはずであろうサリエルが、暗い顔でそう言った。
マラク達はざわついた。
アダムを守るためならお手製の大鎌を振り回して次から次からわいてくる危険な獣達を退治するのもいとわないあのサリエルが。
そのせいで鍛えられた戦闘能力と元から備わっている、憎しみをこめて相手を見つめるだけで相手を傷つけることができるという能力を持つマラク随一の強者でありみんなから恐れられてもかまわなかったあのサリエルが。
そう思ったマラク達は口々にその理由を聞いたが、サリエルは何も答えなかった。ただ頑として譲らなかったので他のマラクが譲歩するしかなかった。
アダムから知恵は奪われたのである。
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