ベジカカ 短編
□運命 ※★
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カカロットが地球に帰還する前に、俺たちは一度だけ、会っていた。
フリーザとの激戦の中、ナメク星の消滅に巻き込まれ、死んだと思われたカカロットが生きていやがったんだ。
その話を聞いて、唖然としている地球人の奴等を無視し、俺の身体はすでに動いていて、気が付くと俺は宇宙船に乗り込み、ヤツを必死に探していた。
カカロットが殺したいほど憎いが、その憎しみの心でさえ、強い好奇心には勝てなかった。
正直、サイヤ人の中で俺が最初になり得るはずだった伝説の戦士をこの目で見て確かめたかった…。
(カカロット…)
カカロットの気を頼りに俺は、わけのわからん星に到着していた。
そこは、生物らしき存在が無く、薄暗い景色の中、ゴツゴツとした巨大な岩がたくさんあり、火山灰が風に舞っているなんとも無彩な星だった。
(こんな所であいつは何をしてやがるんだ?)
だんだんカカロットの気を感じるのが強くなるにつれ、好奇心がさらに高鳴る。
俺はカカロットの気を探り、ヤツの居る場所へ向かう。
すこし飛行した後、巨大な岩と岩が重なり合う隙間から、光が見えた。
(あそこか…。)
近くで着地し、歩いてカカロットの場所へ向かう。
「!!べ、ベジータか!?」
突然、俺の気に気付いたカカロットが慌てて言った。
「あぁ、そうだ。」
「な、なんでここに…?」
「貴様が生きていたと地球人どもに聞いたんでな。確かめに来たまでだ。」
(ん?カカロットの野郎、なぜ姿を見せない?)
俺だとわかっているはずなのに、カカロットは中から出てこようとしなかった。
「おい、なぜ姿を見せない?わざわざ俺様が来てやったんだ、出てこいカカロット。」
俺が中を覗き込もうと、一歩踏み出した時、カカロットがそれを拒んだ。
「頼む、来ないでくれ!」
「なぜだ?」
「お願いだ、ベジータ、今は誰にも会いたくねぇんだ…。特におめぇに一番会いたくねぇ…。だからわりぃけど、そのまま帰ってくれ。」
「なんだと?そのまま帰れだぁ?」
カカロットの言葉にイラッとした俺は、カカロットの願いを無視し、ズカズカと中に入った。
「おい!!カカロット!!一体どういうつもりで、この俺様にそんななめた口をきいてやがる!!」
怒り心頭でカカロットを見つけると、何やらヤツの様子がおかしい。
「うぅ…ベジータ…ばかやろう…」
よく見ると、大きなシーツに身を隠し、丸くなって肩で息をしているカカロットの姿がそこにあった。
「カカロット、どうしたというんだ?何か変な物でも食ったのか?」
「はぁ、はは・・さすがベジータ、勘がいいや。実は…ヤードラット星でさ、リンゴみてぇな実を見つけて美味そうだなと思って食っちまったんだ…」
カカロットはシーツから顔だけ覗かせると、なぜか頬を赤く染め、はぁはぁと息苦しそうに言ってきた。
「そしたらよ、その実、じつは女しか食べちゃいけない実だったらしくて…その実を食べると、身体が他のヤツ等の熱を求めて、ずっと火照って熱くなっちまうらしんだ。」
「・・・要するに発情したってことか?」
「ん・・はつじょう?なんだそれ?」
「子作りをするための行為に気分が昂るだろ。それだ。」
「はぁ、はぁ・・そっか、発情っていうのか!ん//…だからさ、ベジータせっかく来てもらってわりぃんだぇど、このままだとおめぇとも戦えないからさ、今は地球に帰ってくれよ。」
カカロットは息苦しそうに呼吸をしながら、熱が籠った表情でこちらを見つめてくる。
それに思わずごくりと喉を鳴らしてしまう。
「はぁ、はぁ、ベジータの匂いで、おら、さらに身体が熱くなっちまっているんだ。このままだとおめぇに何するか、わかんねぇ…。なぁ、頼むベジータ。」
「俺様に指図するな。ちっ、せっかく貴様の超化する所を今一度確かめに来てやったのに、なんて様だ。」
「はぁはぁ・・・」
「…おい、それはあとどれくらいで治るんだ?」
「はぁ、はぁ、たぶん1ケ月くれえかな…他のヤツの熱を身体に取り込めばもっと治りは早くなるらしいけど、ヤードラット星人のみんなに迷惑かけたくねぇし…」
「だからこんな生物がいない星にわざわざ一人で居やがったのか?」
「はぁはぁ・・・ぅん。」
「なぜ俺に一番会いたくなかった?」
「はぁはぁ…なんでだろうな…」
今まで目を合わせていたカカロットの目が逸れ、顔を俯かせる
先ほどより息苦しく喋るカカロットに、俺は敢えてヤツの近くに寄った。