もう、サヨナラはいわない【霧野蘭丸】
□*サヨナラ1
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「私、霧野君が好きです!付き合ってください!」
「…ごめん」
今日もまた、女子からの告白が。これで、何回目だろうか…。
赤く染めた頬。きれいに整えられた髪。
今まで、何回みただろうか
俺、霧野蘭丸はそう…モテる。うれしいのか悲しいのか、俺に告白してくる女子は、後を絶たなかった
学校では「才色兼備の2TOPの神童と霧野」とかいうレッテルが貼られている
誇るべきことなのだろうが、俺はあまりうれしくなかった。できれば、変に目立たず暮らしたい
他の人には、幸せな悩みだなとよく言われる。確かに、そうだと思う。けれど、やっぱり他のやつが羨ましかった
名前も知らないその人を見つめる
生憎だが、返事はNOに決まっている。相手には悪いと思う、でも…
俺には、‘守りたい人’がいるから___
「あっ、おーい!蘭丸ー!」
「舞!待たせてごめんな」
ほら、ちょうど俺の大好きな彼女がやってきた
―新宅舞。俺にとって一番大事な人。そんな彼女を見ていると、自然と顔が綻ぶ
そして、舞だけは、何もかも特別だった。
「チッ。来たのかよ」
相手の女は舞をにらみつけながら小声で呟く。本当はすぐ怒鳴ってやりたかったが営業スマイルで知らない素振りをみせる
女子って、めんどくさいよな。
「それじゃあ、また」
そういって、俺は一度振り返るとその場を去った
玄関に置きっぱなしにしてあった鞄を持ち、急いで舞の所に向かう
「お疲れ様。また、告白だったの…?」
軽く、首を傾げる舞。これは、癖だ。
さり気ないからこそ、それが、すごく可愛かった。
「あぁ…。勿論、断った!」
俺は、少し顔を赤らめて言った。
ありがとう、と呟く舞。
その顔は微笑んでいた
「ごめんな、いつもいつも…」
帰り道。夕焼け空の下、俺は、切なげに呟いた。
舞は、一度目を見開くと、また閉じ「大丈夫だよ」とまた笑った