もう、サヨナラはいわない【霧野蘭丸】
□*サヨナラ3
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静かな屋上。
吹き抜ける風はすこし肌寒く感じた。
「ねぇ、記憶取り戻したい?....確証はないけど」
昼休みもあと5分に迫っていた。
もうすぐ、ここから出て行かないといけない。
そうじゃないと、授業に間に合わなくなるからだ。
けれど俺は、最後に聞いておきたかった。
彼女の心を。
舞は驚いたのか目を見開いた。
そして、手を後ろで組むと
「もちろん、取り戻したいよ。手伝ってくれるの?」
と誘う様な声で聞き返された。
そういうの、ずるいんだよ....と心のなかで漏らす。
「手伝う」
両手を、ぐっと握り締めた。
新宅さんの本当のこと、知りたいし。
それで思い出したら舞なのかどうかも分かる。
「私のために、わざわざ....ありがとう」
「これから、頑張ろうな」
お互いの手を出し握手をする。
そして、あははと笑う。
新宅さんのため....。
表ではそういってる。
でも、新宅さんには悪いけど俺の中では、これは自分のためだった。