もう、サヨナラはいわない【霧野蘭丸】


□*サヨナラ1
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 本当は、呼び出しを無視してもよかった。


彼女がいるのに他のやつからの告白を普通に受けるっていう神経もどうかと自分でも思った。
俺がその立場だったら、嫌だ。
分かってる。



けれど、しないのは…




___少しくらい「嫉妬」してくれてもいいじゃん__という、俺の願望だったから




何故かって?




それは、舞がいつも、どこか遠慮しているからだ


笑っていてくれるのは嬉しい。でも



もっと、気持ちを表してほしかった。



しかし、結果今日も虚しくその願いは届かなかった



きっと、そのうち「もうっ!今まで黙ってたけどっ…そういうの嫉妬するから…やめて!」
とか言ってくれるいつか…を信じて俺は過ごしている。




じぃっと、前を向き歩く彼女を見つめる。
舞は俺の視線には気づいていないようでただ、前を見ていた。



いつ見ても…可愛い。


ダメだ俺。ベタ惚れしてる。

自分の顔が熱くなるのを感じ、手で口を押さえた。

けれど、口は勝手に動き、とんでもない発言をしていた。



「なぁ、久しぶりに、キス、していい…?」



「え!?」




はっ…何言ってんだ俺!…唐突過ぎるだろ!!



舞は、こちらを向いて目を見開きじっと見つめていた。
混じりを下げて見つめるその顔は、少し不安そうだった。


ひかれたかな…でも、折角なんだ。




触れたい気持ちを抑えられなかったんだ。



…それくらい、久しぶり。…だから




生唾を飲み込んだ。しかし




「え…あ、ごめん!今日は…ムリ!わっ、わたし、帰るねっ!」




と、考える時間すら与えられないまま彼女は光のように俺の元から消えていった





「…え?」




一瞬のことに状況が理解できず困惑する。
俺は、ただ立ち尽くすことしかできなかった。



どうして逃げたんだろうか。



でも、きっと気分が乗らなかった!とか…なはず…。



そう信じたい。


だから、今度でいい!


気にしないでおこう!…



ってムリだろ…。



「なんだよ…。俺のこと、嫌いなのかよっ…」



街頭の明かりだけが家路への道しるべ。取り残された俺は、俯きながらはき捨てるように言った






考えれば考えるほど、それは増していき




「…甘えもしてくれないし、よくよく考えれば最近は妙に素っ気無いし…。ワケわかんねーよ…」



舞が消えていったほうを静かに見つめたまま
名残惜しそうに呟くと、俺は重い足取りで家へと帰った
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