夢から現へ

□漆話
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『よっと・・・!!』






木製の扉を少し押せば・・・






『わぁ・・・!!』






其処は本丸の屋根だった。







逃げ回る事に夢中で、すっかり気が付かなかったが・・・もう外は真っ暗で







空を見上げれば、星空は田舎で見上げたそれと変わらないものだった・・・







『屋上・・・というよりは屋根に繋がる場所だったんだ。』







いやぁ解決解決・・・







したのはいいけれど、どうやら下はまだ騒がしい。







『あー・・・見つかるタイミング、待とうかなぁ。』







でもそれはそれで恥ずかしい。







『夢じゃないぞ、どうしよう・・・いや、どうすればいいんだろう。』







そもそもご先祖様が悪いんだ。







『甚兵衛さんは、何がしたいんだろ。』







空を見上げれば、そこには鮮やかな三日月が顔をのぞかせた。







『さっきは見えなかったのに・・・混乱してるから、かな・・・』







はは、独り言も増えたぞ?







少しだけ、膝を抱える体制をとると、バクバクッと心臓の音がする。







それは紛れもなく私の物で・・・







余計な事を考えなければ、きっと私は此処で笑っているだろう。






前向きな人はきっとまたあとで考えればどうにでもなるっだろうって思うんだろうなぁ。







けれど、どうしても・・・







『なんでごちゃごちゃと余計な事考えるかなぁ。』







もう帰れないかもしれない、なんて・・・







馬鹿だなぁ







「あるじさま!つーかまえた!!」







そう言ってキュッと私の袖を軽く撮む小さな手







『今剣・・・』







「はい!やっとみつけましたよ?あるじさまはかくれんぼがとくいなんですね!!」








無邪気なその言葉に、私は見つかったなぁなんて答えるも声は少し震えていて、泣き止んだのにまたあふれてきた涙をこらえるのに必死だった。







『怒ってないかな。皆・・・』







「おこってはいませんでしたけど・・・しんぱいはしていましたよ?」







いちごひとふりからはなしはききましたという今剣に、あぁー・・・やらかしたなぁと思った。







「あるじさまは、さびしいですか?」







『寂しい、というよりは・・・なんだろうなぁ、たぶん心細い?』







どうしてですか?と聞く彼に、私にはまだ家族がいるからと答えた。







『家族がね、凄く心配するから・・・帰れなかったらごめんなさいも、ただいまも・・・いえない。』







私は“おかえり”が言えなかったから・・・







『あー!!でも後から考えようそうしよう!!!今剣が折角迎えに来たんだし・・・』







降りたら皆いるの?と聞けば・・・







「いますよ!!みんなあるじさまがみたくてだてぐみのへやでたいきちゅうです!!」









聞かなきゃよかったと思ったのは間違いでしょうか・・・
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