夢から現へ

□陸話
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『えっと・・・確かこの駅だな。』






うわー・・・見事に無人駅。






先日、母とのお願いにより私は一人、掃除用具を片手に電車を乗り継いだ







あの腕の痣は神主さんにしっかり見てもらったが、神主さん曰く人に握られたもんやで?っというモノだからこちらは肝が少し冷えた。







誤魔化そうとしたが、如何せん・・・“今朝起きたらこうなっていた”と言ってしまったものだから誤魔化しは効かず、白状すれば・・・







「そらえらいこっちゃやで・・・ナナシちゃん。」







と顔がすっかり真っ青になって居た神主さんに私も少なからずこれはまずかったのだろうか?とうつむいていれば、これからはきいつけーや?っと注意だけにとどまった。







本来ならもう少し御小言を頂くのだが、変な感じではあったかな・・・







因みに痣は放置すれば感知してくれるそうなので、それを隠す様に適当に包帯を自宅から拝借し今はそれを巻いている。







そして今は真冬も近い季節な訳で・・・







『さっむ・・・!!』







寒い中一人で墓掃除をした







姉に助っ人を頼んだが、曰く仕事らしい。母もしかり、因みに私は今日は・・・







仕事(バイト)がない!!休みでした!!!







『はぁ・・・』






外の水仕事は手が冷たくなるので、手を口元に当てて息を吹きかけるなんてデフォな事をしてはみるけれど・・・如何せん私は防水性の手袋は持ち合わせていなかったんですね。








うわー・・・へたこいたー・・・







なんて少し古いギャグがかすめられたが、あの人の格好の方が今は寒そうだ。海パン一丁ってほんと、寒そう








『よし、なんとか終わった。』







やりきったぞうぉおおおお!!!っと叫びたかったが、叫びませんよ?誰が聞いて居るか分からないし・・・







『はぁ・・・帰るか。』







ご先祖様の眠っているであろう墓に線香と真新しい花を供え、手を合わせる。







『ではご先祖様、また来年・・・来ますね?』








良い御年を・・・――――







なんて言って深々と挨拶を交わし、墓前から離れる








掃除用具の忘れ物はなし、ごみの忘れ物なし・・・







小さく呟いて確認し、私は最後に墓前に会釈し元来た道を辿った
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