不幸な彼女が笑う時
□紫色の彼
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憂鬱な気分で階段を上る。
(1日に他学年の廊下を制覇するなんて…)
手の中にある眼鏡を見つめ、関係ない美羽を「一緒に来てくれれば!」と少し恨んだ。
階段を上ると、やっぱり人が多い。
どこのクラスも帰りのHRが終わった直後でざわついている。
(やだなー、やだなぁ)
2年生の廊下を少しずつ進んでいく。
すれ違う2年生の先輩にチラリ、と見られる。
(緊張するし、色んな意味でヒヤヒヤするし、早く帰ろう)
そう心の中で決心し早歩きをしようとしたその時、後ろから誰かにぶつかられた。
その反動で前に転びそうになったが、こんな大勢の前で醜態をさらす訳にはいかない…!と咄嗟に思い、床に手と膝をつく形でなんとか一番悪い形からは逃れた。
しかし、手に持っていた斉木先輩の眼鏡を手放してしまった。
「あっ、…」
私が床に膝をつけたまま手のばして眼鏡をとろうとすると、目の前に男の人が現れた。
「ご、ごめん!!大丈夫っスか?」
その男の人は、紫色の髪色をした一見チャラそうな感じの人。
その彼は、私とぶつかった張本人らしく、床に膝をつく私と目線を合わせるため、しゃがんで私に話かけた。
「はい、これ」
私が拾おうとした斉木先輩の眼鏡も拾い、私に手渡してくれた。
「!!、ありがとうございます」
「ぶつかって本当に悪かったっス…て、この眼鏡、斉木さんのじゃないスか!!」
目の前の彼が、眼鏡を見て驚きながら言った。