不幸な彼女が笑う時
□紫色の彼
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「えっ、斉木先輩をご存知ですか…?」
私も少し驚き、問いかけながら立ち上がると、彼が手をかしてくれた。
「そうっスねー、師匠みたいなもんス!!」と笑いながら話した。
(師匠、?…どんな関係性なんだろ?)
不思議に思い、少し首を傾げていると不意に手を握られた。
「…えっ?!」
「案内するっスよ!斉木先輩の教室まで!」
あまりにもその一連の動作が自然で、きっとこの人はモテるんだろうな、と思った。
…にしても、こう、先輩に手を握られながら先輩達の廊下を歩くのはかなり緊張する。
さっきよりも見られてるし。
ふと、彼を見るとやっぱり香水の匂いはするしチャラそうだけどそれにそぐわない感じで数珠…?を身につけている。
私が数珠をまじまじと見ていると目が合ってしまった。
「…あっ、これ?俺、寺の息子なんスよー、だからまぁ、数珠?」
「へぇ!!そうなんですか!!」
しまった。ガン見しすぎた。
にしてもなんだか意外だなー、なんて会ったばかりなのに感じてしまう自分がおかしくて、くすりと笑った。
「あっ、今、意外って思わなかったスか?」
私の小さな反応を見逃さず、彼に見抜かれてしまった。
「えっ、いやその…ごめんなさい」
私が謝ると彼は「いや、全然いーんスよ!!」とにこりと笑って私の頭を撫でた。
またもや自然なボディータッチに驚き、「わ、」と小さく声を上げた。
(すごいなー、やっぱりプレイボーイかなぁ、私女子の先輩に目つけられたりしないかなぁ)
私の中の彼=プレイボーイの式が完成すると同時に少し不安になった。