不幸な彼女が笑う時
□紫色の彼
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キーンコーンカーンコーン…
私の心臓は帰りのHRの終りを知らせるチャイムの音と共に煩く鳴り出した。
あの眼鏡が斉木先輩のものだと今朝、分かりすぐにでも届けようと思ったが美羽に「朝だとあっちも忙しいだろうし、帰りにしたら?」と止められた。
「美羽っ、行こ!」
「どこに?」
美羽はきょとんとした顔でこちらを見つめた。
「えっ、斉木先輩のとこ」
「な、なんで。アタシは行かないよ」
「えぇっ?!」
美羽も一緒に来てくれるもんだと勝手に思っていたから軽くショックを受けた。
「だってアタシ関係ないし、斉木先輩と面識ないし、家に帰ってケーキ食べなきゃ」
「そ、そんな…!」
最初の2つは正論だが最後のが気に入らないなぁと思いつつ私は1人で行く事になった。
あからさまに不安な私とは裏腹に満面の笑みで私に帰りの挨拶をし、帰る美羽。
(…どうしよう)
何が嫌って、そりゃあ2年生の教室。
他学年だし、先輩だし、帰りなんて廊下混雑してるだろうし。
(先輩達のたくさんいる廊下なんかでまたなんかヘマでもしたら…)
ネガティブな思考が頭を駆け巡る。
「ハァ、…」
何度目かのため息をつき、荷物をまとめ、教室を出た。
(あの子、うまくいくかな)
菜仔が斉木に好意を寄せていると勘違いしている美羽の行動の真意を菜仔は知らずにいた。