小説
□包帯
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「わりぃな、今はこんなんしかねぇんだ」
ここは攘夷軍の夜営。
銀時は高杉の手当てをしていた。
そう、先の戦で高杉は左目を天人に無情にも奪われてしまったのだ。
高杉の左目に巻かれたのは汚い、血で汚れた布切れ。
「平気だァ。……なァ銀時ィ」
高杉がおとなしく手当てを受けてながら言った。
色の白い顔が、月光に照らされ青白く見える。
「どうした?」
「俺は左目は無くしたが、戦うのやめる気はねぇぞ」
ふわりと梅の薫りがする。
花の薫りだなんて、コイツは戦場に身をおいても女なんだと実感する。
「何でだよ!そんな目で戦場なんて出ても無駄死にするだけだぞ!?」
銀時が思わず布切れを巻いていた手を止めた。
「だけど俺は松陽先生をこんなことで諦めたくはねぇ」
「こんな、ことって言うなよ。てめーの目だぞ?てめーはもう少し自分の体を大切にしろ!てめーは女なんだぞ…」
銀時が高杉を強く、強く抱き締める。
高杉の細い体がやけに小さく感じた。
「俺ァいいんだよ、俺の代わりにてめーが考えてくれんだろ?」
いたずらっ子のように高杉が銀時を見た。
「……あぁ。なぁ、高杉。この戦争が終わって先生が帰ってきたら結婚しよう」
「いきなりなんだ、まぁ俺だってお前以外となんて御免だが」
高杉のあっけにとられた顔は一瞬しか見えなくて、すぐにいつもの不適な笑いに戻る。
ふわりと二人の周りに蝶が飛んでいる。