◆AOT2◆
□Der Aprilscherz
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桜の咲き誇る並木、トロスト区にある調査兵団の兵舎敷地内をリヴァイが歩いていると、
「リヴァイ兵長!大好きです」
「兵長が好きです」
「好きなの!兵長の事が」
「兵長の事、愛してます」
「リヴァイ兵長しか愛せません!」
「リヴァイ、好きだよ」
「愛してます、兵長」
「好きだ、リヴァイ」
「リヴァイ兵長、好き!」
「………は?」
兵舎の建屋に辿り着くまでの道のりで、仲間たちから悉く愛の告白をされるという、呆気に取られる事態に陥っていた。
男も女も関係なく好きだの愛してるだのと曰われて、何が何だか分からず首を傾げていると、最終的に、
「「「「今日何の日か知ってる?」」」」
「・・・」
その結果、当然だが、
「下らん」
の一言でバッサリと切り捨てるのみ。
そんなやりとりを何十回も繰り返して、夕方にはうんざりし尽くしていた所。
彼自身も気付いてはいたが、まだ馬鹿騒ぎに参加出来ていない最後の一人が歩み寄りつつあった。
夕焼け空の下、厩舎で馬の世話をしていたリヴァイが、
「(流石に馬は言ってこねぇか)」
などと馬鹿騒ぎに慣れてきて、おふざけ半分に思っていると。
「失礼します」
耳に馴染む声が聞こえて、
「何だ」
馬のたてがみを整えながらリヴァイは彼女を一瞥し、再び目線は馬へと戻して耳を傾ける。
ふと、自分が今までと少し違う心持ちである事に気付く。
「(…?)」
その違いが何なのかは分からない。
そして彼女は言った。
返し技が準備されているとも知らずに。
「兵長、、私!兵長の事が、大好きです!」
「ああ、俺もお前の事が大好きだ」
「っ?!?」
ぼん、と音がしたんじゃないかと思うくらいの勢いで顔を真っ赤にして、彼女が石化した。
ややあってから、リヴァイ自らがその謎解きを行う事になる。
「…どうした、満更でも無いような顔をして。
今日はエイプリルフールだろう」
「…!ああ…なんだ、、びっくりしたじゃないですか!」
赤らめた顔で胸を撫で下ろした彼女に、彼がそのままの口調で、思い出したように言った。
実際、朝からずっと気になっていたのは、誰からの告白でもなく。
「…所で一つ聞くが、今朝、俺の歯ブラシに砂糖をまぶしたのはお前か?」
油断し切っていた彼女が即答した。
「え?塩じゃなかったんですか?」
それを聞いたリヴァイが、目を細め、息をつく。
「…ほう。
そういえば、塩だったか。
…俺は、塩とは一言も言ってねぇが、よく分かったな」
「・・・!!
(はめられた…!)」
慄き、少しずつ後退りし始めた彼女。
馬のたてがみを整え終えた彼が、真っ直ぐ向き直り、一歩、彼女の方へと踏み出した。
「っ私が言い出したんじゃ…た、頼まれて…」
「まあ、言い訳は、日付を越えて嘘がつけなくなってからじっくりと聞いてやる、安心しろ」
「ひっ…か、勘弁して下さい」
「…エイプリルフールに擬えてみれば、それも嘘だという事になるが」
「・・・っ!うわああ!」
駆け出した彼女を容易く捕まえながら、彼は同じ疑問に立ち返っていた。
何十回という告白を切り捨て続けて、最後に感じた"今までと少し違う心持ち"、その正体について。
「(まさか、、、期待、、、?)」
していたとでも、言うのだろうか。
そして、厩舎前の芝生の上に組み敷いた彼女を見下ろして言った。
「おい。…さっきの、もう一度言ってみろ」
「…兵長も、もう一度…言ってくれるなら…」
end