ゴットエランズ
□NO.2 地獄への招待状
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はっと目が覚める。なんだったんだ、あの夢。
死ぬなんて、縁起の悪い。
俺は立ち上がりカーテンを開けた。
いい朝だ。きっといい日になるのだろう。
広くも狭くもない絶妙な部屋に俺好みの家具。
ある意味ここは俺の城だ。
ただ、ドレッサーだけは気にくわないが。
「この「左目」も一生付き合っていくものだから、しょうがない、か」
そう呟き、俺は眼帯をつける。見えないのは少し不便だけれど。
「星夜!!手紙届いているわよ?おきてるの?おきなさい!!」
「おきてるよ。今行く」
母さんは話を聞かない人だと俺は一人笑い、自室の扉を開いた。
***
朝おきて、顔を洗い、服を着替え、朝食を準備して。
こんなありきたりな日常には飽き飽きだ。
高校に進学したものの、話しかけてくる人は皆、見え見えの嘘ばかり。
幸せなんて、ため息をつかずとも逃げていく。
おもしろくもない日常に、終止符を打ちたい。
けれど、そんな些細な変化すら怖いと思う私もいるのだ。
狭い家は、こんな日常の基盤なのだろう。そうそう変わる物じゃない。
いつも通り準備をし終えた私はいつも通り郵便受けを開け、いつも通りではない紙を見つけた。
いかにも重要書類のそれは、私には関係なさそうだ。
だがそのままにするわけも行かず。もし間違いであったなら怖い。
手にとり受取人を見ると確かに、私の名前だ。
「小鳥遊 弥生様 ゴット、エランド?」
日常を変える怖さと、興味と。
私はおそらく、変えてほしかったのだろう。
迷わずに、封を切った。
***
「おはようございます!いい朝ですわね!」
「おはようございます!昨夜は眠れましたか?」
「おはようございます!朝食の準備は整っております!」
おはよう、おはようと、何度返せばいいのか。
私は別におはようを振り撒く趣味はない。
両親もどれだけ人を雇えば気がすむのか。
私まだはベッドから降りる気はない。
すると黒い服をいつも纏った一つ結びの鈴木(仮)が歩いてくる。
「椿様、ゴットエランド社からお手紙が届いておりますが」
「ごはんのあとがいい」
「かしこまりました。それと私は鈴木ではありません」
「んー」
ごはんは好きだが朝晩は気が滅入る。両親と会話なんて面倒くさい。
猫といっしょにごはんを食べたい。
のっそのそと立ち上がり私は一言放つ。
「鈴木(仮)、ごはんを持ってきて。今日は両親と会いたくないわ。
そしてここで手紙の内容を音読しなさい」
「かしこまりました。ですが、鈴木ではございません」
だだっ広い部屋の真ん中にたつ鈴木(仮)の声は切実だった。
だが私はベッドに飛び乗る愛猫を撫で、至福のひとときを過ごしていた。
きっと明日も変わらない日常。