片想い

□vivi
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嗚呼、どうしたものだろうか。

僕は男だというのにも関わらず、こういう風に誘いを受けるのは、そう少なくはなかったのだ。
変わった趣向の人が多いい世の中だと、先日こそ斉藤さんと話し合ったのだというのに、ずいぶん前から変わった人だとお見受けしていた太宰さんに、こうして連絡先を渡される日が来るとは……。


「で?で?どうすんのどうすんの?!まぁ仕方ないよね!名無しさんちゃん可愛いし!男のくせにねぇ!」
テンションマックスの斉藤さんはうふふと笑うと期待の眼差してこちらを伺っていた。


「……太宰さんはいい人だから、仕事が終わったら連絡してみるよ」


連絡先は渡されることはよくあるものの、そのまま捨ててしまったり、紙をなくしてしまうこともあったりして、連絡先交換は今回が初めてとなる。


「まぁ、名無しさんちゃんがここで働き出した時から目をつけられてたっぽいからねぇ!うふふ!すぐに付き合いそうね……何かあったらすぐに教えてね!」

さぁて!仕事しごとっと!
スキップをしながらお店の奥の方へ消えていった斉藤さんを横目にただ、ほんの少しの高揚感を覚えていた。

そして、冷静に考え直す。

「否、斉藤さん?!僕は普通に女の人が好きですから!!!」
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