短編

□文次郎
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「名前!」

「おろ?潮江先輩、どうされました?」



今日は天気が良いから外で木陰に入って本を読んでいた。そしたら前方から私の名前を呼びながらやってきた我が会計委員会委員長…いや、我が会計委員会“地獄の”会計委員長の潮江文次郎先輩



「“どうされました?”じゃない!今日は委員会があるから来いとあれほど言っただろう!こんのバカタレィ!」

「あれ〜?そうでしたっけ?」



どうやら私は委員会のことをすっかり忘れていたらしい。因みに何故三木や団蔵じゃなくて潮江先輩が来たのか聞いてみたら三木は左門探し、団蔵は補習、だそうだ




***




「わぁーお、すっごぉーい。帳簿の山だ」

「感心してないでさっさと始めろ」



会計委員室に着き中を見ると、部屋の半分を埋め尽くす程の帳簿の山がそこにあった

私は「はぁーい」と返事をして潮江先輩の隣に座り、何十冊と積まれた帳簿の束を自身の方へ寄せ例の10s算盤を机に置いた

「苗字名前、帳簿の計算、いっきまーす!」と右手を挙げて宣言し、挙げた右手を算盤の上に勢い良く降り下ろした
「普通に黙って始めろ」と聞こえたが私は気にしない




***




パチパチと算盤を弾く音が響くなか、不意に先輩が私を呼んだ



「名前」

「何です?あ、これでこの帳簿の束は終わりますよ」

「そうか、流石名前だな
それが終わったら少しいいか?」

「いーですよ」




***




「で、何ですか?あ、もしかして計算ミス及び記入漏れがありました?」

「いや、それはない」



じゃあ何だろう?と首を捻っていると「ほれ」と一輪の花を差し出してきた。それはもうシュールだった。もしこれを立花先輩が見たら潮江先輩、確実にからかわれるね



「えーっと…?」

「早く受け取らんかバカタレ」



で、受け取った一輪の花



「レウイシア、と言うらしい。詳しい事は図書室に行くか長次に聞け」














レウイシア…信頼、期待






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