短編
□伊作
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「うわああぁぁぁ!!?」
「…伊作」
悲鳴を上げて落とし穴、基タコ壺に落ちたのは私と同級生の善法寺伊作
彼は今日も今日とてその身に宿る不運という力を存分に発揮しタコ壺に落ちること5回、躓いて転けること9回、計14回という結果を出している
「大丈夫〜?」
「なんとか…」
穴から這い出てきた伊作に付いた土を払ってやりながら新しい怪我がないか確認する
うん、無いみたいだ
「伊作、喜八郎が掘った穴が何処にあるか分かってる?」
「分かってるんだけど、気付いたら手遅れでさ…」
ハハハ、と頬を掻きながら笑う伊作に私は溜め息しか出ない
そして、こうして話している間に伊作の不運ゲージが溜まり新たな不運が襲い掛かる
「うわっ!?」
ズベシャ
「……。記念すべき第10回目の躓いて転ける。伊作さん、おめでとうございます。今回躓いたことにより、本日の不運(私が見た限り)は計15回となりました!」
「名前!!全然嬉しくないよ!!」
「ふふふ。伊作、怪我無い?」
「…うん」
「じゃあ早く保健室に行こ」
***
「ごめんね?」
「…別に気にしてない」
保健室に着くまであれから3回穴に落ちて5回躓いて転けた不運大魔王
「毎度毎度大変ね。躓いたと思ったら穴に落ち、出てきたら小平太のアタックしたボールが顔面にぶち当たるとかある意味凄いわ。良く身体が保つね」
そう言った私に乾いた笑いを溢す伊作
「はい、これで良しっと。ちゃんと休みなよ?いろんな意味で」
「うん、ありがとう。それに、ちゃんと休んでるから大丈夫だよ」
そう言って立ち上がった伊作は衝立の向こう側へ行き、何かを持って私の前に座った
「あ、そうそう。これ、名前にあげようと思ってね」
「これ…」
「ふふ、花言葉は知ってるだろう?」
そう問われ頷く私は伊作から貰った生けられた花を見て自然と口角が上がった
『梔子…私は幸せもの』
2016.0802