短編

□どんな言葉でも受け止める
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ほんの少しの好奇心だった



同じ委員会の一つ下の後輩、鉢屋三郎。私にとても懐いており何をするにも良くくっついてくる。そんな三郎がいつも肌身離さず持っている黒いファイル。私はそのファイルが何なのか気になり彼に見せてもらおうと頼んだ

それがいけなかったのだろう




「あれ?名前先輩、どうしました?固まっちゃって」




「先輩だけですよ?」と言って渡された重みのある黒いファイルに少し緊張した。上から見ると数十枚の用紙が綴じられていたため、私はてっきり勉強に使うのかと思っていた

だからこんなものが綴じられていたなんて全く想像もしなかった




「…何、これ」

「何って、先輩の写真に決まってるじゃないですか!」




そう。このファイルに綴じられているのは授業等のメモではなく私の写真だった
一枚のルーズリーフの裏表に二枚ずつ、計四枚の写真を貼っているルーズリーフを何十枚と綴じていた




「……」

「あれ、もしかして見惚れてます?分かります。分かりますよぉ!だって見てくださいよこれ!めちゃくちゃ可愛くないですか!?可愛いでしょ!
特にこの寝顔なんてもう堪らない!!超レアなんですよ?!名前先輩の寝顔!」




同意を求められても自分自身が可愛いなんて思うナルシストじゃない

ペラペラと捲りその写真を指した後「あ、後で名前先輩の新しい写真を追加しておかないと」なんて言った三郎に私は「キモい」と呟いた




「…え?今なんて言いました?先輩今なんて言いました?もう一回言ってくださいよ!ほら、もう一回!もう一回!」

「だから、キモいっつってんだよ」

「キモい!っはぁ〜!名前先輩からの罵声、頂きました!イエーイ!」




小躍りしそうな勢いで喜ぶ三郎は私の目の前で眼を輝かせ、更にとんでもないことを言いだした




「ウザイ・汚い・気持ち悪い!もう何でも有りですよ!先輩(と雷蔵)ならどんな言葉でもぜぇーんぶ受け止めれます!
ほら、もっと言ってくださいよ!」




…正直、流石にこれは引いた




「三郎お前馬鹿じゃないの?マジでキモい」

「くぅ〜!罵声2コンボにその冷たい視線!堪んねぇ!!」




普通なら傷付くであろう言葉も三郎には通じないらしい
現に今の言葉にだって悦びを感じ悶えている

お前を悦ばせたい訳じゃないんだけど…


私はそんな三郎にファイルを押し付けるように返し、逃げるようにその場を去った












(「っちょ、先輩何処に行くんですか?待ってくださいよ!」)
(「着いてくんなこの変態!!」)


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