藍
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ベチャ
「…ん?」
突然聞こえた音になんだと思って顔を上げると豆腐に埋もれる塊がいた
「…ちょ、ちょおおおお!!?へ、兵助!?何やってんの!!?」
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がり思わず身を乗り出すが仕方ないと思う
だって…
豆腐に埋もれるって何事だよ!聞いたことも見たこともねェよ!
今初めて見たわ!!
しかし、顔面から何の躊躇もなく飛び込んだであろう当の本人は幸せそうな声を出して豆腐を食べていた
「…兵助」
首根っこを掴んで持ち上げると両手で口を押さえもちゃもちゃと口を動かし、耳を垂らし悲しそうな顔で豆腐を見た後何するんだ、と言いたげな顔をして私の方を見た
「それは止めなさい」
「何故だ」
「汚れるでしょ」
「兵助、小鉢の周り見てごらんよ」
そう、兵助が埋もれたおかげで小鉢の周りが大惨事になっていたのだ
あっちこっちに飛び散る豆腐の欠片。無残である
ちなみに兵助も豆腐まみれである
「…ごめん」
「ん、今回は許してやろう。でも次からはしないこと!」
「……分かった」
とは言ったものの中々治らず豆腐から出しては埋もれるを繰り返す兵助(可愛いんだけどね)
だが飛び込む寸前に豆腐を取り上げ雷蔵に取り押さえてもらう、といった行動を数回とるようにしたその結果、兵助は豆腐に飛び込むことをしなくなったのだった
その日だけという期限で…