トリガー少女の冒険

□1 三雲修
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わいわいがやがやと煩い教室で、修は正反対とも言えるほど静かに座っていた。

けして周りとの付き合いが悪い訳ではない。
もともと騒ぐタイプではないし、なによりどこもかしこも自分の受け答えがしづらい、ボーダーについての話だったからだ。


「きのうの戦闘望遠で撮った。」

「うおお近界民でけー!」



「先輩の彼氏、ボーダーにスカウトされたらしいよ。」

「えー、ほんと?!すごーい!」

撮影したものを自慢気に見せているものも居れば、先輩についての噂話をしているものまで。

「あー、おれもボーダー入りてーなー。『トリガーオン!』」

「にあわねえ〜!」「絶望的」

中にはボーダーに入りたい、などと淡い期待を抱いているものまで。···その友達はなかなかシビアだが。


少しだけ聞こえてくる周りの声を広いながら静かに教師を待つ修。


喧騒は止まない、そう思った矢先___

ボスッと鈍い音をたてて筆箱が修の頭に直撃する。


「ぶはははパス失敗!!」

「あんくらい取れよ、おまえ」

「かえしてよ〜!」


思えば、教室の喧騒の中でも一際目立った行動をしていたものたちがいた。

「おいメガネ、それこっちよこせ。」

コイツらか、と思いつつ、体の丈夫さは置いておいて、度胸でこんなクズに負けるような人間ではない。

「お?」

不良の横を通り過ぎた修は、一直線に持ち主の少年に向かう。

「あ、ありがと···」


席に戻り、再度先ほどのように座りなおす修。

「かっこいー」

「マジかこいつ、超冷めるわ」


後ろで不良が自分の悪口を叩いているのは気が気ではないが···

あくまでも、『自分がやりたいからやったまで』である。後悔は微塵もしていなかった。

周りがなぜこんなにも騒がしいかというと···

「先生来ないんだけど」

そう。教師が来ないのだ。

「転校生の相手してるんじゃない?」

「あー」

修は自分の隣の席が空いていることに漸く気付く。

おそらく転校生のものであろうその席。あまり気に止めていなかったが。
 
                ・・
「めずらしいよな、三門市に転校してくるって」

     ・・
「転校していくならわかるけどな」

そう。いくら出ていく人間は少ないとは言え、近界民に恐れを抱くものもいる。

故に転校していくならまだしも、転校してくることはほとんどないのだ。


「もしかしてボーダー関係者だったりして」

それにピクッと反応した修。

(ボーダー関係者······!?)

そう考えると同時に、その転校生の席を挟んで右隣の席にいる『はず』の同級生を思い浮かべる。

(確か···サボり魔で有名なはず、だよな···)

修が3年になってからと言うもの、見たのはテストの時だけ。

にも関わらずテストの成績はいつも満点の天才だった。おまけに結構可愛い。


しかし、割りと静かなため、みんな結局話かけられないのだ。

(学校、来ないのか···?)


今はまだ、彼の心情を知るものは誰一人としていない。
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