変態さんと僕

□ろくっ!
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こんにちはこんばんは。このシリーズにしては珍しい続き物ですよね。


いずみん先輩の家の前にいますが、インターホンを押す勇気さえありません。


ああ、いつもみたく僕に気が付いて抱きついてこないかな。



···僕も相当、末期なんだなぁ


これは変態いずみん先輩と僕の、日常的非日常を綴った物語である。


ろくっ!


『···どうしよう。』

簡単なことだよ。目の前のインターホンを押せばいいんだから。

···簡単、なんだよね。ならなんで、こんなに

『緊張、してるの···?』


「今日も可愛いな」って言われて恥ずかしかったし、ちょっとしつこかったけど。

僕のことを一番に考えて、理解してくれて。

泥沼に沈みかけてた『私』を引っ張り出してくれた。

時折見せる真面目な表情も、僕をドキドキさせて止まなかった。


まだこの気持ちは分からないけど、きっと僕といずみん先輩を繋いでくれるもののはずだから。

上手くこの気持ちに名前をつけられる自信はないし、緊張して声が震えるかもしれないけど、ちょっとだけでも伝えるよ。


ゆっくりと深呼吸をして、いざインターホンプッシュ!!


ピンポーン


どきん、どきん、


[はーい]

『い、ずみん先輩』

[は!?みお!?ちょっと待ってろ、今いく!]


名前ちょっと噛んだぁぁぁぁぁあああああ!!

え、てか結構元気?来る意味あった?


···そんな思いは、出てきたいずみん先輩によってかきけされた。



『せ、先輩!寝てないんですか!?』

「···とりあえず、上がってけ。」

『···はい』


がちゃりと開いた扉から出てきたいずみん先輩の目の下に、確かに刻まれた隈。三輪先輩を越えるであろうそれに思わず声をあげる。

少しだけ微笑んだ先輩は、突然来ても快く家にいれてくれた。

靴を脱いだところで、後ろにいたいずみん先輩がフラりと傾いた。


「二階、が···おれ、のへや、つきあた···」

『先輩!?、っと』

トリオン体で来てよかった···

倒れ込む直前でキャッチしたお陰で先輩にも問題なし。

そのまま先輩を姫抱きにして、起こさぬようゆっくり階段を上がった。


_______

_____

__


いずみん先輩の部屋に入ってすぐ目にはいったベッドに近付いていく。

掛け布団を捲ったあと、先輩をそこに寝かせた。

「すー····すー····」

『····ばーか』

深く刻まれた隈、血色の悪い頬、疲れのたまった顔。

すべてがいつもと違って、少し怖くなった。

「···だれが、ばか···だって···?」

『!起きてたんですか。···先輩に決まっているでしょう。心配したんですから。』


「はは、心配してくれてたのか···いっつも迷惑かけてる男を···?」


『···え?何、言って···、!』


疲れて混乱しているのだろうか_______







____それとも、これがいずみん先輩の本音なのだろうか。

真意は分からないけど、彼の瞳から流れ出る涙は···今の彼を表しているようだった。



「いっつも、うざいくらい抱きついて、迷惑、かけて···おれに、みおの側にいる資格なんて、ない···っ」


『な、』


「めんどくさかったよな、うるさかったよな···っ、もう、ほおっといていーから、嫌いにならないでくれ···!!」

ポロポロと流れ出る涙。意味不明な文字の羅列。

僕の我慢も、限界を過ぎていた。




『っそんなわけない!!僕がどれだけあなたに救われたか、あなたが理解してないだけ!』

「、え···」


『確かに、いっつも可愛いなって言われて恥ずかしかったし、あなたに辛く当たった時もあったけど!···あなたは確かに、僕の光なんです···!だから、』


壊れものを扱うかの様にそっと、彼の頬に触れる。


『資格なんていらないから、僕の側にいてくださいよ···先輩がいないと、僕はだめになってしまいます。』

「みお、おれは、」

『話なら、明日ゆっくり聞きます。だから今は寝てください。僕は帰りますから、ちゃんと休んでくださいよ?』

ベッドの淵に座っていた腰をあげようとしたとき、ぎゅっと抱き付かれ、もとの体勢に戻ってしまった。

「一緒に、いてくれ。」

『····はいはい、分かりましたよ。ちょっと待ってくださいね。』

ベッドの側に置いてあった鞄の中から携帯を探しだし、太刀川さんに連絡する。

『もしもし、太刀川さんですか?』

[ああ、みおか。どうした?]

『出水先輩と僕、明日休ませてもらっていいですか?』

[いいぞ、お前のことは風間さんに言っておく。出水にはしっかり休めって言っといてくれ。]

『はい、では。』

プツリと切れた携帯を鞄に戻し、いずみん先輩の隣に横になった。

「太刀川さん、なんて···?」

『ゆっくり休め、だそうです。』

「そっか···」

そこまで言うと、いずみん先輩の腕に抱き寄せらる。そのまま頬に擦り寄ってきたかと思えば、いきなり顔をしかめた。

「トリガー、切れよ」

『はいはいはい。』

「よし、寝るか···」

くぁ、とおっきな欠伸をしたいずみん先輩。いつもとは違う、生身の先輩の香りが鼻を擽った。

『おやすみなさい。』

「おう、おやすみ···」



今日は、なんだか平和です。


ろくっ!おわり

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