夢と記憶と伝承と。

□一個目
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なんだろう、あの声には聞き覚えがある気がする。

私の中にある何かが、『逃げなきゃ』って叫んでた。

夢を見てただけ。ましてや傍観者のように。

喋っている二人は私に関係なく話していた。それだけなのに、あの子の名前が聞こえてきそうになっただけで····『恐怖』という感情が溢れてきた。






ゆっくりと、瞼を持ち上げる。

どれくらい眠っていたのだろう。晩御飯を作らなければ。

母は私が9歳になったときにはもういなかった。何故かは知らない。おかげで家事をすべて自分でやらなくてはならないし、このだだっ広い一戸建てに自分一人だけなのは····辛いときもあった。


でも、私が強くなるには必要な時間だったと思っている。





そこまで考えて、はてと首を捻った。

私は家に帰ってベッドで寝たはず。ここまではいい。私が今寝ているのだってベッドだ。

だけど明らかに可笑しいのは···


『なに、この部屋····』


私の部屋はこんなに大きくない。おまけに所々お高そうな壺やら絵やらが置いてある。

極めつけには、隣に寝ている赤髪の男の子。

起きるまで存在に気付かなかったけどずいぶん近くに寝ていたようだ。


『····起きて下さい、あの』

「ん····」



ゆっくりと揺らしてみると、存外あっさりと起きた。すごい綺麗な顔してるなー。あれ、見たことある気がする。


「····君は?ここはどこだい?なんで俺がこんなところに···」

『んー·····あっ!!』

「?」

『あの、黒子テツヤって知ってます、よね···?』


よく見たらこの人、テツヤの中学時代のチームメイトだ。WCのときは目の色が違ったのに····まさか、別人!?


そんな杞憂は、あっという間に過ぎ去った。


「ああ、君は黒子の幼なじみかな?」

『え?』

「桐ケ谷みおさん、だったかな?」

『は、はい。』


そう素直に答えると彼___確か赤司くん___の顔が少し綻んだ、気がする。


「···そうか、君があの__」

『!!静かに!』


何か言おうとした赤司くんには申し訳ないけど遮らせてもらう。かなりヤバい状況だ。どうする、考えろ···!!









私は、ゲームが好きだ。テツヤがバスケにのめり込んでるくらいには。

特にホラーゲームは大好きだ。現実では味わえないスリルがあるから。

だからこそ分かる。今が_____












_____扉の奥、廊下からナニカの近付いてくる様な音がなるこの状況が、とてつもなく恐ろしいことを。





どこか、隠れる場所は····、!!あそこに!!


「桐ケ谷!?どうした!?」

『静かに···!ヤバいよ、かなり』


焦りながらも私は赤司くんの手を引いて、




部屋の隅にあるクローゼットに二人で駆け込んだ。

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