夢と記憶と伝承と。
□四個目
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ゆっくりと足を出していく。
アイツがいた跡は何一つ残っていなかった。
その代わりに芽生えた一つの確信。今が_____
_____ホラーゲームのような状況であること。
あの嫌な雰囲気、声···私の感覚が、第六感までもがヤツを『人ではないもの』として認識していた。
人ではないものということは残される選択肢はたった一つ。
『化け物、かー···』
「やはり、ホラーゲームのような展開になると思って行動した方がいいのだろうか。」
遅れて出てきた赤司くんが推測を立てる。彼の言うことも一理あるけど、この状況で彼の推測を宛にするのは少し危ない。
『展開を考えて行動しちゃいけないよ。確かに時には必要だけど···ホラーゲームは展開を考えると動けなくなっちゃうから。』
「?動けなくなる?」
『うん。ホラーゲームっていうのは大体、一つ一つの行動が重要になってくるの。でもあまり考えすぎると···動こうとする度に疑念が湧いてきて、結局何も出来なくなってしまう。大事な場面での決断も出来なくなってしまうからね。』
私の家は結構裕福だった様で身内の保険金もそれなりに掛かっていた。9歳のときにはもう両親はいなかったし、それは全て私のお金になった訳だけど。
9歳以前の記憶がない私の心の支えになったのは、優しい幼なじみと、ゲームだけだった。
だから保険金のほとんどはゲームに注ぎ込んだし、中でもホラーゲームに惚れてからと言うものそれを買うためならお金に厭目は着けなかった。
その中で洋館を探索するものはもちろんあったけど、今の様な状態のものは無かった気がする。
つまり、あまりゲームを宛にしすぎない方がいいってことだ。
「···桐ケ谷がいると心強いね。ゲームも侮れないな。」
『ふふ、そうでしょ!···って、さっきなんか言いかけてたけどなに言おうとしてたの?』
「?····ああ、桐ケ谷が黒子の言っていた『ゲーマーの完璧系幼馴染み』だよね?」
ゲーマーは確かだね。うん、あいあむゲーマー。
····完璧系幼馴染みってなに!?完璧系ってどーゆーこと!?テツヤそんなこと言ってたの!?
『ゲーマーですけど完璧じゃないです···!!テツヤの嘘だよ!』
「···中2の球技大会で一時期有名になったよね?バスケットに愛された少女。」
ああ、連続で3Pを決めたりバックシュートしたりで会場をちょっと盛り上げたら、しばらく女子バスケットボール部からの勧誘がウザかったことが···あったような、なかったような。
「あとテストの結果、貼り出されたとき大抵俺と同率だった。」
『そ、そうなんだー···』
「まあいいさ。···とりあえず部屋を散策してみようか。」
そういって動き出した赤司くん。この広大な部屋を散策するって···ホラゲーの主人公って大変なんだな···
『っと、その前に』
「?」
てくてくと歩いて扉に向かう。キョロキョロと扉を見ているとお目当てのものが見つかった。
『あった!鍵はっけーん!』
また入って来たら困ると一応鍵をかけておく。
これで準備完了!
『よーし、散策開始!』