アイコンタクト不通
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物事が動き始めている。
俺とボウイの、アルバイト、は、やたら忙しくなった。それもそのはずで、あれほどソドムにごろごろしていた用心棒稼業の無法者たちがめっきり減ったのだ。
それも地球人ばかり、腕のたつ順にいなくなる。
結果、もめ事の仲裁そのものが増えただけに止まらない。これまで顔を突き合わせれば「この通りは俺の縄張りだ」のと下らないことを吹っ掛けてきていた者が居なくなった。それは一向に構わないが、今度は居なくなった奴の縄張りを巡って小物同士でぶつかったりする。
あーっくだらない！いっそのこと俺とボウイでソドムじゅうシメて仕切っちまおうか？
なんて、、馬鹿な事を考えるくらいに忙しい。
その上、この騒ぎが例のRSD 社の引き起こしたものなんだから頭が痛い。アイザックが調べるまでもなく、俺とボウイにも接触があった。「RSD 社で警備の仕事をしてくれたら、船が出来しだい優先的に乗せてやる」だとさ。絶句したね。船どころか、ドックを健造してる途中だって言うじゃないか。うさんくさ〜！
この際だからRSD社の中身を見てきてやろうかってんでアイザックに持ちかけたら、、何の事はない、とっくにポンチョが深ぁく関わっていて、情報量は足りているとの事。
そういえばポンチョはAZの騒動の時に俺たちと行動していた事から、当時のデザーター組織のリーダー達、、現在はその殆どが臨時政府の重要人物、、の中にとんとん拍子に顔を売り込んでしまった。
普通そこまでいけば、自分が政治屋になってしまうか、大きな商売を始めるとか考えそうなものだが、やっている事は昔と変わらない情報屋。それにプラスして、調達屋というのもやっている。
何もかも崩壊したAZ からの解放後、誰でも何かを欲しがった。需要がある所に、多少うさんくさいルートでも供給が出来る人物というのは重宝で、いつの間にかポンチョは相当な金持ちになっていた。
調達屋の顔でRSD 社と関わったポンチョは、今ではRSD にかなりの金を貸しているのだとか。
で、結局俺たちの興味シンシンは行き場をなくしてしまった。
ソドムでは既に、RSD が荒っぽいのばかりを集めているという噂が広まり始め、その噂に尾ひれがついて背びれも生えて、勝手に泳ぎ回っている。鱗もあるかもしれない。
『あの会社は兵隊を集めてクリスタル原石の鉱山を占拠しようとしている』
『船を造る技術を独占するためではないか』
『地球人はあの会社を隠れ蓑に武装集団になる』
ソドムは険悪ムードだ。
地球人対アースガルス人の喧嘩も増えたし、アースガルス人同士の喧嘩に首を突っ込む時はよほどうまくしないと、あからさまに敵対視されたりする。
地球人同士も、半ば疑心暗鬼にかかりつつある。異星の地に来て立場の弱い者同士、肩を寄せあって生きてきた。いつか共に帰ろうと誓った仲間が、ある日一人だけ居なくなる。RSD という地球行きの切符を手に入れて。
「だんなぁ〜俺ちゃんもう、やりづらくてたまんないよ。なんとかならんか？」
「なんとかもへったくれもないわよ。誰も何も、依頼してこないんだもの」
我が家の中も外に引きずられて喧々囂々。アイザックがくそまじめな顔をしてボウイに問う。
「依頼のどうこうを抜きにしたら、お前はどうしたいと思う？」
「どうって、、、。はいはい、わかりましたよっ、なんとかならんかとは、俺の口が行き過ぎましたっ」
ふて腐れ気味に座っているボウイの頭に腕を乗っけて、引き継いでアイザックの問いに答えた。
「どうしたいってーか、RSD 次第だろ？社長の、、アラン・ガルディアだっけ、そいつとか、主だった奴等がどんな奴でなに考えてるんだか。それ次第でどっちに転んでもいいんじゃない？」
「あら、度胸すわってるじゃない？」
「主だった、、と言えば、RSD 設立の折りにガルディアについて政府を抜けた恒星間シップの専門家たち、ここ最近、家族と連絡が取れていないようだ」
「なあにそれ？きな臭いのね」
「いや、確認は取れていない。もともと泊まり込みで仕事をしていたようだしな」
「オメズラシイ！確認を取れていない時点で教えてもらえるとはネー」
「それはすまなかったな。口が行き過ぎて」
なんだかんだ言ってるうちにこんなやり取りになってしまう。ミーティングにもなりゃしないこの集まりは、そろそろお開きという事だな。得た物と言えば、それぞれがこの状態を良くないと思っているという事。それからこの顔ぶれでがちゃがちゃやってると、ちょっとは明るい気分を取り戻せるという事。
「そのうちにRSD につくか、そうじゃないか、っていう選択をするよーな事になりそーだな。他に選択肢があったら教えてくれ、アイザック」
アイザックは真面目顔を少しくずして、無言で肩をすくめて見せた。
あ、「私にもわからん」の合図だ。そんなはっきり、、嘘だろー？フリ、してない？なんか隠してない？
「やっぱり依頼まちよね。あーあ、じゃあね、おやすみ」
お町は最近よく眠る。