桜月夜2

□57.残り香
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澄みきった夜空に冴えこおるような満月が輝いている。ゆっくりと紅茶を飲みながら、楽しかった1日を振り返るように、満月を見上げたほたるはため息をそっともらした。「ホント。今日は最高に楽しい誕生日だったなぁ。だって、私はきっと世界で一番幸せなんだもん!」大好きな人と一緒に過ごせた時間は、とても優しくて、暖かくて、ほんの少しだけ切なかった。ほたるだけの贅沢で幸福な時だった。それが夢などではないことを証明するように、さっき抱きしめられたシャツの袖からほのかに薫る残り香がある。それは、甘くとろけてしまいそうなオレンジとパッション系な香りで、元気で情熱的にさせてくれるような感じは、とても心地良かった。ずっと君の記憶に残って欲しいモノをと思ってこれを選んだよと言ってくれたプレゼントは、あなたの愛用と同じコロン。この薫りは私にとっても、特別で大切なモノになった。だってこれは私の幸せな世界を開けるための小さな鍵だから。
END.
2005.1.6.

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