桜月夜3

□81.ピンクなうさぎの幸せ
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郊外にある赤煉瓦造りの小さな洋館。
フランス窓には、クロッカスの咲いた鉢が飾ってあり、庭には薄紅色の桃の樹が、見事な花をつけていた。
外からちらりと見える、窓の内側には、白いブラインドがちらりと見える。
ラベンダー色の天蓋付きのベッドには、天蓋のカーテンと同じ色のシーツが敷かれており、縁にレースの付いた楕円形のクッションが置いてあり、ピンク色のうさぎのぬいぐるみがちょこんと座っている。
ベッドと反対の壁側には、ハート形の鏡の付いたドレッサーと、たくさんの本やドールが飾ってあるキャビネットがあり、家具も全て薄茶色で統一されていた。
天蓋付きのベッドにちょこんと座り、お気に入りのうさぎのぬいぐるみを胸に抱いたほたるは、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
春の暖かな陽射しが、彼女の透ける様な白い肌をより一層、白くみせ、さらさらの黒髪は、ピンクのリボンの付いたパレッタで、ハーフサイドアップに結わえられており、白いセーラー襟が付いた上品な薄いピンクのワンピースと、茶色のリボンがアクセントのポレロに、身を包んでいた。
今日はホワイト・ディなので、みちるに手伝ってもらい、ちょっとだけおめかしをしたのだ。 まさに、ほたる自身が、愛らしい小さなピンクのうさぎのようだ。
「おはよう。どうしたの?可愛いな」
「今日は気分が少し良いから、おめかしをしたの」
「そっか。でも、無理をすると、また熱が上がるから、ちょっと休もうか」
そう言うはるかによって、半ば強引に私はベッドに寝かせられた。
あれっ!なんだろう?
朝、起きた時にはなかったのに、枕元に何かがある。
そこには小さな箱が置かれていた。
すぐに箱を開けてみると、中から 、白とピンクの可愛いうさぎのマシュマロが、顔を覗かせており、カードが入っていた。
そのカードには、”バレンタインは、チョコをありがとう。これはお返しだよ”と書いてあった。
差し出し人の名前は書いてなかったけど、綺麗な筆跡は、はるかの字だった。
他にも、まだ箱の中には、何か小さい物が入っているようだ。
つまんで出してみると、それは、銀の台座に、小さなハート型のアメジストと、ガーネットと、パープル・ フローライトが、3つ並んでいる、イアー・カフだった。とても可愛らしい。
「あぁ!なんて素敵なの。うさぎのマシュマロも可愛くて、こんなの食べられないよ!」
こみあげてくる嬉しさと同時に、私の身体が丈夫なら良かったのにと思わずにはいられない。
そんな事を考えていると、不意にはるかが入ってきた。
「さっきのプレゼントは、気に入ってくれた?」
「もちろんよ。ちょうどイアー・カフが欲しかったのよ。ありがとう」
「それなら、良かった。着けてあげようか?」
「うん。お願い!」
ほたるの左耳の上の部分にイアー・カフを着ける。
小さなハートが揺れて、キラキラと輝くのが、良く似合った。
「痛くない?」
「痛くないよ」
「これで、ほたるは永遠に僕のお姫様だ」
「ねぇ、こんな私でもずっと側においてくれる?」
「もちろんじゃないか。君の全部を僕は愛しているよ」
そう言うと、はるかはほたるを自分の腕の中に、しっかりと抱きしめた。
小さなほたるは、はるかの腕の中にぴったりと収まった。
最愛の人の腕の中で、ほたるは最高の幸せをかみしめた。
End.
2015.3.14.

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