桜月夜3

□85.新たな未来へ
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三十一世紀、かってエターナル・セーラームーンが、ギャラクシー・コルドロンで倒したカオスが復活し、その怨念体が地球を襲ってきた。
コルドロンの戦いで、セーラーコスモスが語っていた通り、戦いは日々、激しさを増し、カオスとの最終決戦を前に、ネオ・クイーン・セレニティはある決断をした。

そして、クリスタル・パレスの最奥部、時空の扉の前に、ネオ・クイーン・セレニティ、セーラーサターンと、セーラーちびムーンが、そっと現れた。
扉の番人であるセーラープルートは、逃れられない運命がきたのだとすぐに理解し、マゼンタ色の瞳を伏せた。
「クイーン、時が来たのですね?」
「えぇ。今からスモール・レディとサターンを過去に逃すわ」
それを聞いたふたりの顔色が変わった。
「スモール・レディ・セレニティ、サターン、良く聞いて。貴女達はシルバー・ミレニアム一族の、最期の「希望」なの。だから、生き延びて、せめて普通の女の子として幸せになってちょうだい」
「ママ、分かったわ」
白く透き通るような顔に涙を浮かべたちびムーンは、無理に微笑みを作り、薄紅色の長い髪をふわりと振り払うと、頷いた。
「ネオ・クイーン・セレニティ、分かりました。プリンセスは、この命に代えましても、私が守ります」
黒髪のサターンも大きな瞳に涙を溜めて頷いた。
「プルート、時空の鍵を」
「はい。スモール・レディ、サターン、どうか元気で」
プルートに付き添われて、扉を出たふたりが振り返って、最期に見たネオ・クイーン・セレニティは、とても美しかった。
ちびムーンとサターンは、手を携え、時空の鍵を掲げると、呪文を唱えた。
「時の衛人よ、時空の扉、天空を裂き、我に開け放て、我は汝の真の名を呼ぶ、衛人の父クロノスよ、我を導きたまえ、我を守りたまえ 、光の道を我に!」
ふたりが時空の狭間を通り、過去の世界に無事に着いた事を確認したプルートは少し微笑んで、時空の通路を冥空封印すると、最期の戦いに向かった。

その夜、カオスとの決戦には勝ち、辛うじて地球は守れたものの、三十一世紀のシルバー・ミレニアムの一族は、クリスタル・パレスと共に滅んだ。

* * * * * * *

まばゆい光の回廊を抜けると、そこは二十一世紀の東京の芝公園だった。
いつの間にか、戦闘服も、セーラー衿の付いた普通のワンピースになっており、ふたりの背中には、荷物が詰まったリュックが付いていた。
「ちびうさちゃん」
「何?ほたるちゃん」
お互い、最近では呼ぶ事の無かった愛称がするりと出てくる。
戦士やプリンセスではなくて、ふたりが普通の女の子に戻った瞬間だった。
「これから、どうしようか?」
「うーん、クラウンの指令室にでも行ってみようよ。誰か居るかもしれないし」
その時、誰かがふたりの肩を叩いた。
「どうしたんだぃ?可愛い子猫ちゃんたち」
「海が騒いだから、迎えに来たわ」
はるかとみちるがいつもの笑顔で、そこに立っていた。
ほたるは、はるかに、ちびうさは、みちるに抱きついた。
「小さなプリンセス、もう大丈夫よ」
「ほたるも、辛かったな」
「ふたり共、未来で何が起きたか、知ってるの?」
「あぁ、タリスマンを通して、未来のヴィジョンが見えたんだ」
「そう」
とりあえず、火川神社に行くと、みんなが揃っていた。

* * * * * * *

すぐに、うさぎがちびうさに抱きついてきた。
「良かった!ちびうさ、無事で」
「うさぎ!でもね、すべて無くなっちゃったの」
「うさぎさん、これ、ネオ・クイーン・セレニティからのお手紙です」
ほたるがリュックから取り出した手紙には、これまでの詳しい経緯と、ふたりをよろしくといった事が書かれていた。
「大丈夫よ!このうさぎにまかせなさい」
うさぎのその頼もしい表情を見て、ほたるとちびうさは、心がやっと落ち着くのを感じた。

* * * * * * *

新たな未来は、これから自分たちが作っていける。
新しい輝く世界が待っている。
ようやく、ふたりは、心から微笑む事が出来た。

END.
2015.5.14.

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