桜月夜3

□90.腹心の友
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梅雨も、あと少しで明けそうな、晴れた日。
白い綿雲から覗くソーダ色の空は、夏が近い事をしめしている。
放課後の公園で、ほたるは誰かを待っていた。
その腕の中には、しっかりとピンクのリボンがかかったギフトボックスが抱きしめられている。
その時、背後から聞き覚えのある声がした。
「ほたるちゃん、お待たせ。遅くなってごめんね。委員会が長引いちゃって」
「私も今、来たところだから、気にしないで。ちびうさちゃん、お誕生日おめでとう。これ、私からのプレゼント」
そう言うと、ほたるはピンクのリボンがかかったギフトボックスをちびうさに渡した。
「ありがとう。あたしの誕生日、覚えてたの?嬉しい!」
「ふふっ、親友の誕生日を忘れるわけないわよ」
照れたほたるの白い頬がうっすらと赤く染まった。
「ねぇ、ほたるちゃん。これ今、開けてみてもいい?」
ちびうさの問いに、ほたるはいたずらっぽい笑顔で答える。
「今はダメよ。今夜、パーティが終わって、落ち着いたら、これを開けてね」
「うん。わかった!楽しみだなぁ〜」
そんな会話をしながら、ふたりは微笑みあった。

* * * * * * *

その夜、空にはパールのような満月が輝き、ゆっくりと安眠効果のあるハーブティを飲みながら、楽しかった1日を振り返るように、窓の外の満月を見上げたちびうさは、満足げなため息をもらした。
「今日は最高に楽しかった誕生日ね。あっ!ほたるちゃんからのプレゼントを開けてみよう」
ピンクのリボンをゆっくりと解き、ギフトボックスを開けると、そこには、色々な物が入っている。
可愛いうさぎのぬいぐるみ、薔薇のステッチの入ったレースのハンカチ、そして、メッセージカード、底には赤いブックカバーのかかった小さな本があった。

メッセージカードには、四つ葉のクローバーが貼ってあり、この本に書いてある言葉が、私とちびうさちゃんの関係にぴったりだったから、これにしたのよ♡ほたると書いてあった。
少し、その本を読んでみると、すぐにその意味がわかった。
孤独に育った主人公が、やっと出来た親友と自分の関係を表す言葉が「腹心の友」という表現になっている。
確かにそれは自分達の関係にもぴったりと当てはまる。
ずっと特別で大切な親友にだけ使う「腹心の友」は、素敵な言葉だ。
明日、ほたるちゃんに会ったらこの幸せな気持ちを話そう。
そんな事を考えながら、ちびうさは幸せな眠りに落ちていった。
その幸せそうな可愛い寝顔を、窓の外から満月が優しく見守っていた。

END.
2015.6.30.

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