桜月夜3

□98.恋月夜
1ページ/1ページ

今日は仲秋の名月。
黄金色にも銀色にも輝く美しい光が、窓から射し込んでくる。
ぼんやりと夜空を見上げると、神秘的な光が心の底まで、見透かしていくようで、少し怖くもなる。
この先、運命を司る月の女神は、自分達にどんな運命を用意しているのだろうか。
その時、隣に居る僕の天使が、きゅっとしがみついてきた。
「どうしたの?」
「あの月を見ていたら、あの透きとおるようなまばゆい光がすごく怖くなったの。変よね。あんなに綺麗なのに」
「そんなことないよ。僕もそうだよ」
「はるかもなの?」
「あぁ、あまりにも綺麗な月は不安になるよ。あの時みたいにさ」
「そうね」
月明かりの中の彼女は、いつもよりも、儚げで触ると壊れてしまいそうだ。
でも、お互いに抱きあうと、体温が伝わり、暖かさが、2人を包みこむ。
その確かな温度が、揺れる不安をゆっくりと溶かしていく。
僕は、みちるの身体をあらためて抱きなおした。
「暖かい。ずっと、こうしたかったの。もう大丈夫よ」
「みちる…」
それ以上の言葉はもう要らなかった。
ねぇ、みちる、君の相手がこんな僕で良いのなら、ずっとこれからも2人で一緒に居よう。
その約束を満月だけがそっと見守っていた。

END.
2015.9.27.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ