桜月夜3

□106.満月とテディベア
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キラキラとイルミネーションが輝く夕方。
その輝きにも負けないほどの笑顔の少女が、誰かを待っていた。
うさぎは、ふわふわしたピンクの膝丈コートに身を包み、長いブロンドの髪をツインテールにまとめている。
「遅いなぁ、後10分しても来なかったらLINEしちゃおう」
しばらくすると、急に後ろから目隠しをされた。
「誰〜だ」
「もう、遅いよ。はるかさん」
うさぎは頬を膨らましたまま、そっぽを向いた。その様子がまた可愛らしい。
「ごめん。待たせたね」
はるかの手がうさぎの手と恋人つなぎになった。
それだけで、うさぎの心は、もうドキドキして、さっきまで怒っていた事などはケロリと忘れてしまった。
今日は、満月のクリスマス・デートだ。
隠れ家みたいなお洒落なカフェに入り、温かい飲み物を飲みながら、プレゼントを交換する。
「Merry Christmas☆はるかさん、これ、気に入ってもらえると嬉しいな」
うさぎが差し出したのは、綺麗にラッピングされた箱に入ったブリザード・フラワーだ。深紅の薔薇やピンクのカーネーションが可愛らしい。
「へぇ、素敵だね。どこで買ったの?」
「これね、まこちゃんに作り方を教わって、私が作ったの」
そう言うと、うさぎは照れたように微笑んだ。
「じゃ、僕からはこれをどうぞ。プリンセス」
はるかが差し出したのは、ちょっと大きい包みだ。
「ありがとう。開けてみてもいい?」
「もちろん」
包みから出てきた物は、テディベア。つぶらな瞳がなんとも愛らしい。
「可愛い!今夜から毎日、一緒に寝るよ」
思わず、テディベアをぎゅっと抱きしめたうさぎは、もうひとつのプレゼントに気付いた。
テディベアの首にオープンハートのペンダントが付いている。
「これも、もらっていいの?」
「そうだよ。そっちが本命さ」
改めて、オープンハートのペンダントをうさぎの首に掛けると、ちょうどオープンハートの真ん中に嵌め込まれている小さなルビーがキラリと輝いた。
その後の帰り道、満月の光の中で、ふたりはそっと抱きあって、心からのキスをした。
恋人達の神聖な夜の出来事を、満月とテディベアだけが見ていた。

fin.
201512.25.

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