桜月夜3

□110.本当のあなた
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放課後、体育館で基礎のウォームアップをしていたら、グラウンドから陸上部の女子が走る姿が見えた。
はるかは、誰よりも風のように、そして楽しそうに走っていた。
その姿は、とてもかっこよかった。
練習も終わり、帰ろうとして、上履きを履き替える為に下駄箱を開けると、バラバラと大量のチョコレートが降ってきた。
そうか、週末はバレンタインだったなと気付く。
「アイドルは流石だな」
「そう言う、天王先輩も、すごい荷物ですね〜」
いつの間にか、セーラー服とスカートに着替えたはるかが、学生鞄と、大量の包みが入っていると思われるエコバックを抱えて立っていた。
「これ、使いなよ」
さっと差し出されたのは、予備のエコバックだった。
「…ありがとうございます」
相変わらず、気遣いは完璧で優しいな。
帰り道、並んで歩いていると、他の学生達がいなくなった頃を見計らって、はるかが俺に何かをくれた。
「セイヤ、なんか疲れているみたいだから、これ、あげる。アイドルに過労で倒れられたら、あたしも困るからな」
ツンデレ満載な言葉と、共に渡されたのは、綺麗にラッピングされた可愛らしい包みだった。
いつも忙しいのに、いつの間に用意してくれたのだろうか?
「開けてみても良い?」
「どうぞ」
近くの公園に入って、包みを開けると、中から出てきたものは、テディ・ベアの形をした高級ブランドのチョコレートだった。
このひと、なんで普段はボーイッシュでかっこいいのに、素は女性らしくて、なんて可愛いんだ。
そんな彼女が愛らしくてたまらない。
嬉しさのあまり、思わず抱きつくと、頬まで真っ赤にしたはるかが嬉しそうに頬笑んだ。

END.
2016.2.13.

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