星月夜1

□13.小さな天使の願い事
1ページ/1ページ

沙羅は、脳に重い障害があり、17歳になったばかりだが、10歳児程の身体のサイズだ。
外に出る事も滅多にない為、肌は雪のように白く、たまに儚く微笑む姿は、まさに穢れのない天使のようだった。

ひとりでは、手足を自由に動かす事も、会話をする事も出来ない為に、幼い頃に親から捨てられ、ずっと郊外のサナトリウムでひっそりと暮らしている。
常にベッドに体を横たえている彼女は、排泄にも障害があり、おしっこも、うんちも常時失禁の状態だ。だから、いつもテープ式の紙おむつをして、過ごしている。
自分では、濡れた事も、汚した事も、よく分からない為に、お知らせセンサーが濡れた事を代わりに教えてくれる。
アラームが鳴り、呼ばれたナースが素早くテープを剥がして、沙羅の紙おむつを開くと、赤ちゃんのようなつるつるのお尻とお股が現れる。未成熟な身体は幼児の頃から変わらないままだ。
紙おむつの中はレモン色になっているたけではなく、吸収体のカサカサとしたところからの適度な刺激によって、女の子の大事な部分から出てくる、とろりとした透明な液体も、たまに混ざっている。
ナースは汚れた紙おむつを新しい物に交換すると、沙羅に優しい声をかけてくれる。
「もうすぐ、食事よ」
「…う」
食事といっても、沙羅は嚥下機能にも障害があり、胃に直接通してある胃ろうのチューブに、ペースト状の栄養剤や、水分、薬を入れるだけだ。

ひとりでは何も出来ず、ベッドに寝たきりの沙羅は、これまで、お人形のように静かに暮らしてきた。
楽しみといえば、微睡む夢の中で、いつか誰かに愛される事を願う時だった。

そんなある日、沙羅の身にびっくりするような事が起きた。
サナトリウムに視察に来た財閥の娘である爽子が、純粋な心の沙羅を見て、沙羅に一目惚れをしたのだ。
爽子は、半ば強引にサナトリウムから沙羅を自分の屋敷に連れて帰った。
環境の変化に、はじめは戸惑っていたものの、次第に爽子に心を開いた沙羅は、よく笑うようになった。
そして、数年後、沙羅は本当に自分を愛してくれる爽子の腕の中で、天使のように幸せになった。

END.
2015.5.30.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ