桜月夜1

□08.月光浴
1ページ/1ページ

今日は満月。黄金色にも銀色にも輝く神々しいまでの美しい光が、開け放った窓から射し込んでくる。僕はぼんやりと星空を見上げる。少し贅沢な気分になれる月光浴だ。隣には、いつしか眠ってしまった僕の小さな天使が、無邪気な笑顔を見せている。こうしていると、心の奥が暖かなモノで一杯になり、今までの悲しかった事や辛い過去が癒されていく。ほたるとこうして居られる事は、いつの間にか何物にも代え難くなっている。寝ていたほたるが目を覚まし、僕に抱きつく。驚いた反面、嬉しくもあるが、ここは平静を装う。「どうした?怖い夢でも見たか」「ううん。その逆だよ。良くは覚えてないんだけど、すっごく幸せな夢を見たの」「そっか」「はるかはまだ寝てなかったの?」「あぁ。満月があまりにも綺麗だったから、それを見てたんだ。月光浴ってとこかな」「わぁ、本当ね。すごく綺麗だね」彼女が風邪を引かない様に、そっとガウンを羽織らせる。月光の中のほたるはいつもよりも、優しく儚げで、触ると壊れてしまいそうな夢の様だ。でも、夢ではない証拠に抱いている彼女の体温が、僕の胸に伝わってくる。心地良い暖かさが、2人を包む。僕は、改めてほたるの小さな体を抱きなおす。「はるかって暖かいね。私、ずっとね、誰かにこうして欲しかったんだ」「ほたる…」もうそれ以上、言葉は要らなかった。 ねぇ、ほたる、それが僕で良いんならずっと傍に居るし、絶対に、これから2人で幸せを掴もうね。約束だよ。きっと2人だったらなれるからね。 END.2002.5.9.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ