桜月夜1

□20.ディナーの後
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晴れた日曜日。「じゃ、いってきます」「気をつけてね」優しく抱いていたほたるを地面に下ろすと、はるかはレースに行った。「風邪を引くわよほたる。さっ、中へ入りましょう」「はい」みちるに促されて家に入る。はるかがいない家はガランとしていて心の奥が何か大事なモノを忘れた様な、落ち着かない様な不安な感じだ。寂しいなぁ。でも、さっきの抱きしめられた温もりがまだ腕に残っている。その事を考えると少しだけ元気が出た。「ほたる、お夕飯何が食べたい?たまには、外で食べようか?」「えっ!いいの?」「たまには贅沢をしましょ」というみちるの提案で、高級フレンチレストランでディナーになった。「美味しいわね」「うん」デザートに入る前に、みちるが紫のリボンがかかった小さな白い箱を鞄から取り出した。「はい。ほたる、開けてごらん」「えっ!これは…」「素敵でしょ。今回のテスト、ほたるが頑張ってたから、これは私とはるかからのご褒美。この前、デパートに行った時ね、これはほたるにぴったりだねってはるかが見つけたのよ。まだ少し大人っぽいかもしれないけどアメジストだったから、ほたるらしくて良いなと私も思ったから、それにしちゃったわ。どう?」それは、ホワイトゴールドの台座に小さいアメジストがちょこんとクロスになったアンティーク風のブレスレットだった。「嬉しい!こういうのがすごく欲しかったの。ありがとう」「いいえ、どういたしまして。ねぇ、ほたるは今、幸せ?」「もちろん、言葉に出来ない位、幸せだよ」その一言を聞いてみちるが優雅に微笑んだ。「ほたるがそんな風に喜んでくれると私も嬉しいわ」「私もみちるの笑顔を見るのは大好きっ!」そんな会話の後、2人でデザートを食べた。こんないつもと違う日も良いと思った。
 fin.2002.12.10.

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